発注書、納品書、仕入先の商品リスト。この3つを並べて、数量と品番を指で追っていく時間が毎週あります。
見つかるのは、たいてい数行です。それでも全部見ないと不安なので、全部見る。この記事では、全部見るのをやめて「確認すべき行」だけを残す手順を説明します。作業は20分、使うのは普段のChatGPT画面だけです。
この記事で分かること
- AIを使っていない会社がつまずいている場所(調査データ)
- 用意する3つのファイルと、無料プランの制限
- 照合表の列を固定するプロンプト(5分類)
- 人が原本で見るのは2種類だけ、という絞り方

01AIを使わない理由の1位は、「使う業務が思いつかない」
中小企業庁の「2026年版 中小企業白書」の概要によると、AI活用に取り組んだ中小企業は30.3%。取り組んでいない企業に理由を聞くと、1位は「活用する業務がイメージできていない」で63.4%でした。[1]
ヒントは同じ図にあります。実際に活用している事業者のうち、バックオフィス部門で「活用している」と答えた割合は73.4%。営業・販売・顧客対応の68.2%より高い数字です。事務や確認の作業ほど、先に効いているということです。[1]
この記事は、その具体例を1つ渡します。発注と納品の突き合わせです。
02用意するのは3つのファイル
- 発注書(自店が出したもの)
- 納品書(届いたもの)
- 商品リスト(仕入先のカタログ、または自店の取扱表)
CSV、Excel、PDFのままで構いません。紙しかなければ写真でも読めますが、読み取りミスが出る前提で進めます。
先に条件を1つ。 OpenAIの公式ヘルプでは、ファイルのアップロードは有料プラン向けの機能として案内されており、無料ユーザーは1日3ファイルまでとされています。[2] 発注書・納品書・商品リストでちょうど3つなので、無料プランでも1日1回はこの作業ができる計算です。上限や提供条件は変わるため、実際の画面で確認してください。
03照合表の列を、先に決める
「照合して」だけでは、毎回ちがう形の答えが返ってきます。列を指定します。
コピーして使えます
アップロードした3つのファイルを突き合わせて、1つの表にしてください。 列は次の順で固定してください。 品名/品番/発注数/納品数/単価/差異/判定/要確認理由 判定は次の5つだけを使ってください。 1. 一致 2. 数量違い 3. 品番違い 4. リスト外(商品リストに無い) 5. 読取不明(文字が読めない、値が欠けている) 読み取れなかったところを勝手に補完しないでください。 推測した箇所があれば、その行の要確認理由に「推測」と書いてください。 金額の合計は出さないでください。
最後の3行が大事です。AIは空欄を埋めたがります。埋められた空欄は、目視より危険です。
04「読取不明」を残すのが、安全な使い方
出てきた表のうち、人が原本で見るのは2種類だけです。
確認すべき行が数行まで減る——これがこの作業の成果です。「AIがミスを見つけてくれる」ではありません。

05仕入先への確認文まで、続けて作る
差異が見つかったら、そのまま連絡文にします。
コピーして使えます
上の表のうち、判定が「数量違い」「品番違い」「リスト外」の行について、 仕入先へ送る確認メールの下書きを作ってください。 ・相手を責める表現を使わない ・こちらの発注内容と、届いた内容を並べて書く ・返品や値引きを、こちらから提案しない ・最後に「原本を確認のうえご返信ください」と添える 金額の請求や支払い条件には触れないでください。
返品・値引き・支払いの判断は、店主と仕入先の交渉です。AIに条件を提案させないようにしておきます。
06会計と在庫の正本にはしない
ChatGPTが読んだ数字を、会計や在庫の元データにしない。 表はあくまで「どこを見るか」の地図です。数量、単価、税率、返品可否は原本で確認します。
取引先の情報を入れる範囲を決めておく。 仕入先名、担当者名、単価は取引条件です。入れてよい範囲は安全な使い方の記事の青・黄・赤で先に線を引いてください。
毎回、同じ列で出させる。 列がぶれると前月と比べられません。上のプロンプトを保存して使い回します。
07まとめ ── 今週の20分
- 5分 ── 発注書・納品書・商品リストの3つを用意する
- 10分 ── 列を固定した指示で照合表を作り、5分類させる
- 5分 ── 「読取不明」と「リスト外」だけ原本で確認し、必要なら確認文を送る
仕事そのものの棚卸しは店主がいないと回らないお店の直し方、商品ごとの利益は忙しいのに利益が残らないお店の直し方で扱っています。
AIに探させるのではなく、自分が見る場所を減らす。 これが、事務作業でAIを使うときのいちばん確実な入り口です。
[1] 中小企業庁「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」21ページ 図1「AI活用の状況と活用に当たっての課題」(2026年7月22日確認)。資料は(株)帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」。(1)2019年以降の省力化投資のうちAI活用に「取り組んだ」は30.3%(n=5,645)。活用事業者のうち部門別に「活用している」と回答した割合は、バックオフィス部門73.4%(n=1,577)、営業・販売・顧客対応部門68.2%(n=1,605)、製造・生産管理・物流部門57.2%(n=1,210)。(2)AI活用に「取り組んでいない」と回答した事業者に聞いた活用していない理由(複数回答・上位5つ)は、活用する業務がイメージできていない63.4%、活用を推進する人材が不足している40.0%、社内ルール・ガイドラインが整備されていない26.2%、セキュリティ・情報漏えいへの不安がある14.5%、必要な予算を確保できない13.8%(n=3,888)。回答企業の認識を集計したものであり、因果関係を示すものではありません。chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2026/PDF/2026gaiyou.pdf
[2] OpenAI Help Center「File Uploads FAQ」(2026年7月22日にページを開いて確認)。ファイルアップロード機能の用途として、複数文書の比較、スプレッドシートの分析、特定の記述の検索、条件に合う行数の集計などが挙げられています。対応形式はテキスト・表計算・プレゼンテーション・文書の一般的な拡張子。提供対象はChatGPT Plus / Pro / Enterprise と案内され、無料ユーザーは1日3ファイルまでとされています。上限や提供条件は変更されるため、利用時点の公式ヘルプを確認してください。help.openai.com(File Uploads FAQ)
