CTOブログ

お客様が離れない値上げの伝え方 ── 謝るだけにしない「価格改定のお知らせ」をChatGPTと作る

原価が上がっているのに値上げできない——理由の多くは「お客様が離れるのが怖い」です。でも、値上げの案内は謝罪文ではありません。変更日・対象・理由・守ること・選べる方法の5つを事実で伝える「説明文」にすれば、お客様は思っているより離れません。

この記事で分かること

  1. 値上げの前に計算しておく数字(何食減っても大丈夫か)
  2. 値上げだけに頼らない、利益を増やす5つの方向
  3. 「価格改定のお知らせ」に入れる5つの要素と例文
  4. ChatGPTに任せてよいこと・任せてはいけないこと
閉店後の店のカウンターで、価格改定のお知らせを手書きしている店主の手元
いちばん気が重い打ち手だからこそ、伝え方に手をかける

この記事は前回「商品別のもうけを見える化する」の続編です。簡易採算表がまだの方は、先にそちらから読むと数字が揃います。

01先に「何食減っても大丈夫か」を計算する

値上げが怖いのは、「お客様が減ったら赤字になるかも」が感覚のままだからです。先に数字にしておけば、怖さは「確認すべきこと」に変わります。

1,000円の日替わり定食(材料費420円・粗利580円・1日45食)を、1,080円に上げる場合で試算します。

現在 1,000円 1食の粗利 580円 1日 45食 粗利 26,100円 改定後 1,080円 1食の粗利 660円 1日 40食(5食減の仮定) 粗利 26,400円 これは予測ではなく「何食までなら今の粗利額を保てるか」を知るための試算
1日5食減っても、粗利額はほぼ維持できる——先に知っていれば、怖さの質が変わる

大事なのは、これが「5食しか減らない」という予測ではないこと。「何食までなら耐えられるか」という安全ラインを知る計算です。ラインが分かれば、値上げ後に見るべき数字(1日の販売数)も決まります。

02値上げだけが手ではない ── 5つの方向を同じ表で比べる

利益が薄いと分かると、つい「値上げか、原価を削るか」の二択になります。実際には方向は5つあります。

  1. 販売価格を見直す(値上げ)
  2. 量や選択肢を見直す(小盛りと通常を分ける)
  3. 商品を組み合わせる(粗利の厚いセットを作る)
  4. 仕込みや提供方法を変える(時間と手間を減らす)
  5. 廃棄と売れ残りを減らす(曜日限定・仕入数の見直し)

ChatGPT(対話型のAIサービス)に頼むときは、1案だけでなく条件の違う案を同じ表で比べさせるのがコツです。

コピーして使えます

次の商品の利益改善案を比較してください。

案は、
1. 価格改定
2. 量または選択肢の変更
3. セット化
4. 提供方法の変更
5. 廃棄削減
から、現実的な3案を選んでください。

各案を同じ比較項目
(変更内容/新しい価格/1個あたり粗利/粗利額の試算/
 必要な作業時間/お客様への良い点/不安に思われる点/
 実行前に確認すること/7日間で測る数字)で表にして、
数字は式とともに示してください。

予想販売数は事実ではないので、必ず「仮説」と付けてください。
私が伝えていない原価や需要を作らないでください。
税務と最終価格は判断しないでください。

[商品の簡易採算表を貼る]
[店の営業時間・席数・スタッフ数]
[変えてはいけない品質やサービス]

最初に試すのは、効果が最大に見える案ではありません。1人でも7日間実行できて、数字を記録できて、問題があれば元に戻せる案です。そのうえで「やはり値上げが必要だ」となったら、次の伝え方に進みます。

03「お知らせ」に入れる5つの要素 ── 謝るだけの貼り紙は損

値上げを決めた店主がやりがちなのが、謝罪だけの貼り紙です。

大変心苦しいのですが、諸般の事情により値上げいたします。
ご迷惑をおかけして申し訳ございません。

これでは、何がいつから変わるのか、店が何を守るのかが伝わりません。「諸般の事情」は、お客様から見ると説明を省略されたのと同じです。案内には次の5つを入れます。

1 変更日 ──「○月○日から」を最初に見つけられるように 2 対象商品と新旧価格 ── 旧1,000円 → 新1,080円 と並べて書く 3 確認できる理由 ── 実際に上がった費用だけ。盛らない・作らない 4 店が守ること ── 続ける品質・量・サービスを具体的に 5 お客様が選べる方法 ── 小盛り・セットなど、ある場合だけ案内 謝罪は短く一度だけ。残りの行数は、この5つの事実に使う
「申し訳ありません」を減らして、事実を増やす

ランチ店の例文です。

価格改定のお知らせ

いつも当店をご利用いただき、ありがとうございます。

食材と光熱費の上昇が続く中、仕入先や使用量、廃棄の見直しを
進めてまいりましたが、現在の内容を続けるため、
○月○日から日替わり定食を次の価格へ変更いたします。

旧価格 1,000円
新価格 1,080円

食材の内容と1食の満足感を大切にしながら、
今後も安定して提供できる店づくりを続けます。

量を控えたい方向けには、小盛りのご用意もあります。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
店のレジ横に置かれた価格改定のお知らせカード
貼る場所はレジ横・入口・卓上。実施日の2〜4週間前から

04ChatGPTには「言い訳」ではなく「整理」をさせる

文章づくりはChatGPTの得意分野ですが、頼み方を間違えると、やってもいない努力や大げさな理由を作文してしまいます。渡すのは確認済みの事実だけ、と条件で縛ります。

コピーして使えます

価格改定のお知らせを作ってください。

条件:
・変更日、対象商品、旧価格、新価格を見つけやすくする
・確認済みの理由だけを使う(理由を追加で作らない)
・過度に謝り続けない
・お客様の理解を当然のものとして求めない
・店が守る品質やサービスを具体的にする
・選べる量、セット、代替商品がある場合だけ記載する
・値上げしない商品や例外を勝手に作らない

[価格改定の事実:対象・新旧価格・変更日]
[実際に上がった費用:何がどれくらい]
[店が続けること]
[お客様が選べる方法]

出てきた文章は、そのまま貼らずに一度声に出して読みます。自分の店の言葉になっているか、書いていない事実が混ざっていないか。この2点だけは、店主にしか確認できません。

05価格転嫁は「悪いこと」ではない ── 国の白書も後押ししている

値上げに罪悪感を持つ店主は多いのですが、国の整理は逆です。2026年版白書の概要は、費用の変動分を適切に販売価格へ転嫁すること(価格転嫁)は、付加価値額の増加に直結すると位置づけ、原価管理がその転嫁率を高めることを挙げています。[1] 原価を把握して、必要な分を価格に反映する——前回の簡易採算表と今回のお知らせは、まさにその王道の手順です。

ただし、線引きは守ります。

内容
任せてよい 改善案の比較表づくり/お知らせ文の下書きと言い回しの調整/安全ラインの試算(検算する)
必ず店主・専門家 最終価格の決定/値上げ理由の事実確認(上がっていない費用を理由にしない)/税務の判断(税理士へ)

06まとめ ── 値上げを決めてから貼り出すまで

  • 簡易採算表で対象商品の粗利を確認する(前回記事)
  • 「何食減っても大丈夫か」の安全ラインを計算する
  • 値上げ以外の4方向も、同じ表で3案比較する
  • それでも値上げなら、5つの要素でお知らせを書く(謝罪は一度だけ)
  • 実施日の2〜4週間前に掲示し、実施後7日間は販売数を記録する

値上げは、お客様との関係を壊す打ち手ではなく、店を続けるための説明の機会です。数字で安全ラインを知り、事実で伝える。この2つが揃えば、「申し訳ありません」だけの貼り紙より、ずっと誠実な値上げができます。

[1] 中小企業庁「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」(2026年4月・2026年7月確認)。費用全体の変動分を適切に販売価格に転嫁すること(価格転嫁)は付加価値額の増加に直結するとし、財務・会計面では原価管理による価格転嫁率の向上への好影響を挙げる。調査に基づく傾向であり、個別の店舗の成果を保証するものではありません。chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2026/PDF/2026gaiyou.pdf

甲斐ショウジ

この記事を書いた人

甲斐ショウジ株式会社GMJ 代表取締役CTO兼CAIO

20年超のIT事業経験とGoogle関連事業での実績を基に、多数のAIシステムの開発を主導。AIとMEOで、小さなお店・中小企業の経営を強くする実践情報を発信しています。

CTOブログの記事一覧へ

関連記事

TOP
目次