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ChatGPTに入れてはいけないお店の情報 ── 使い方を青・黄・赤の3色で決める

ここまでのシリーズでChatGPTは、返信・販促・手順書・経営会議まで使える相棒になりました。だからこそ最後に必要なのが安全の線引きです。結論から言うと、ルールは2つだけ。使い方を青・黄・赤の3色で分けること。そして顧客情報は「減らして入れる」の前に「まず入れない」こと。魔法の設定ではなく、迷わず止まれる線を作ります。

この記事で分かること

  1. きれいな投稿に4つの間違いが入っていた実例(何が起きるか)
  2. 使い方を仕分ける「青・黄・赤」の3色ルール
  3. 変わる情報は「正本」へ戻る仕組みと、確定情報だけで書かせるプロンプト
  4. 顧客情報・データ設定・メモリーとの安全な付き合い方
焼き菓子店の作業台で、いちごのタルトの実物とスマートフォンの投稿下書きを見比べる店主の手元
公開ボタンの前に3分。実物と見比べる場所があるかどうかが分かれ目

01きれいな投稿に、4つの間違いが入っていた

住宅街の小さな焼き菓子店。週末限定の「いちごのタルト」を案内するInstagram投稿をChatGPTに頼んだところ、数分で華やかな投稿案ができました。でも公開前にスタッフが気づきます。

間違い1 見た目の誇張 画像のタルトが実物より1回り大きい → 来店したお客様の期待とズレる 間違い2 存在しない添え物 実物にない生クリームが添えられている →「写真と違う」という不信につながる 間違い3 価格の誤り 画像内の価格が780円でなく680円に → 店頭で100円高い説明をする羽目に 間違い4 安全に関わる作文 頼んでいない「小麦を控えている方にも」 → 実際は小麦使用。食べる人の安全に直結 投稿案がよくできていたからこそ、見落としそうになった
直すべきは「AIを使ったこと」ではなく、作る流れに確認の場所がなかったこと

この店の結論は「AIをやめよう」ではありませんでした。商品そのものは実物を撮影する。価格・販売日・数量は販売カードと1字ずつ照合する。原材料の文はAIに推測させない。公開前に店主以外の一人が3分だけ見る——これだけで、ChatGPTは「怖い道具」から速く試作できる道具に戻ります。

02自然な文章と、正しい内容は別物

ChatGPTの文章には見出しがあり、理由があり、結論があります。でも文章が自然であることと、内容が正しいことは同じではありません。OpenAI自身が、誤った情報を出す場合があり、間違っていても自信があるように聞こえると案内しています。[2] 人も思い違いをしますが、違いはAIが短時間にもっともらしい文章を大量に作れること。1件の間違いがInstagram・LINE・POP・店舗情報へ一気に広がります。

不安を感じるのは自然なことです。中小機構の調査では、AI・IT導入にあたりセキュリティや情報漏えいへ懸念があると答えた中小企業は合計75.2%(強い懸念21.6%+多少懸念53.6%)でした。[1] しかし不安なまま「全部禁止」にすると使える場面まで失い、「便利だから全部任せる」と店の責任まで渡してしまう。必要なのは、真ん中に線を引くことです。

03迷ったら、青・黄・赤の3色で考える

そのまま試作を始めやすい仕事 アイデア出し・見出し候補・自分の文章の推敲・匿名メモの分類・接客練習の相手役 使えるが、公開前に正本と照合する仕事 営業時間・価格・原材料・在庫・求人条件・利益の試算・制度や法令に触れる説明 入力しない・最終判断を任せない仕事 顧客名簿・問診票・従業員の評価や給与・パスワード・アレルギー可否や診断・採否の決定 大切なのは色を完璧に決めることではなく、「これは黄だから一度止まろう」と言えること
青でも出力を鵜呑みにしない。赤でも「専門家に聞く質問作り」には使える——ただし元データは渡さない

この3色は店の体制で変わります。一人店なら黄を確認するのも店主。スタッフがいる店なら、作る人と確認する人を分けられます。まずは今使っている場面を書き出して、3色に塗り分けてみてください。

04変わる情報は、ChatGPTではなく「正本」へ戻る

営業時間・価格・在庫・原材料——変わる情報には、迷ったとき最後に戻る「正本」(正式な1つの資料)を決めます。営業時間なら店舗カレンダー、価格なら最新の価格表、原材料なら仕入規格書。ChatGPTには正本の内容を渡して、形を整える仕事だけを頼みます。

コピーして使えます

以下の「確定情報」だけを使って、Instagramの案内文を作ってください。

確定情報にない価格、日付、特徴、効果、原材料、予約条件を
推測して追加しないでください。
不足している情報は、文章を作る前に
「確認が必要な項目」として一覧にしてください。

[確定情報]
商品名: いちごのタルト
販売日: 7月25日、26日
価格: 780円(税込)
数量: 各日12個
予約: 電話または店頭
原材料・アレルギー: この依頼では案内文に書かない

完成したら照合までAIに手伝わせます。「案内文の記述/元にした確定情報/一致・不一致・要確認の3列で照合表を作ってください。確定情報にない内容は、良い表現に見えても要確認に」。ただし最後に見るのは照合表ではなく、店主自身が開いた元の価格表とカレンダー。AIに2回聞くことは、2つの別資料で確かめることにはなりません。検索結果のリンク付き回答も同じで、店の判断に使う前に必ず元のページを開きます。

05顧客情報は「減らして入れる」の前に、まず入れない

予約表・顧客台帳・問診票・応募書類には、一人ひとりの大切な情報が入っています。個人情報保護委員会も、生成AIへ個人情報を含む入力をする場合の利用目的の確認や、規約・プライバシーポリシーの確認を注意喚起しています。[3] 小さな店の最初のルールはもっと単純でいい。顧客名簿・予約表・問診票・応募書類を、そのままChatGPTへ入れない。分析したいときは、渡す前に人が情報を減らします。

悪い例:
田中花子さん、090-XXXX-XXXX、7月18日15時に来店。
腰痛があり、前回は強い刺激を嫌がった。次回の案内を考えて。

減らした例:
月1回来店する既存客。
前回は刺激の強さについて要望があった。
個別の施術判断はせず、来店後の感想を聞く一般的な文案を考えて。

「Aさん」に変えただけでは不十分な場合もあります。店名・日付・珍しい相談内容の組み合わせで個人が分かることがあるからです。スクリーンショットを送るときは四隅まで見る——画面の端に別のお客様の名前や通知が映っていることがあります。

店の事務机で、価格表のファイルを開いてスマートフォンの文面と照合する手元
最後に開くのはAIの画面ではなく、店の正本。この一手間が事故を止める

データ設定とメモリーにも一言。会話を学習に使うかを選ぶ設定や、履歴に残らない一時チャットは確認しておくべきですが、設定は「入力してよい許可証」ではありません。学習利用を止めても、店が守るべき利用目的・本人との約束・法令は残ります。メモリーに覚えさせてよいのは業種・客層・文章の好みなど変わりにくい前提だけ。顧客情報と、価格のようにいつも最新であるべき情報は覚えさせない。月に一度「この店について何を覚えていますか」と聞いて、設定画面のメモリーも確認しましょう。

06まとめ ── 今週の30分でやること

  • 今ChatGPTを使っている場面を全部書き出す
  • 青・黄・赤の3色に塗り分ける(迷ったら黄)
  • 変わる情報ごとに「正本」と確認する人を決める
  • 「確定情報だけで書く」プロンプトを定型にする
  • 顧客情報は入れない、を店内の共通ルールにする(設定確認もセットで)

安全な店とは、間違いが一度も起きない店ではありません。間違いが起きる場所を知り、公開前に止め、起きたあとに隠さず直せる店です。次の記事では後半——生成画像と表示のルール、公開前の3つのチェック、間違って公開したときの6手順、そして「自店用AI利用ルール1枚」を作ります。

[1] 独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」報告書25ページ 図35(2026年3月公表・2026年7月確認)。AI・IT導入にあたるセキュリティや情報漏えいへの懸念(単一回答・n=1,645)は「強い懸念がある」21.6%、「多少懸念がある」53.6%で、合計75.2%。AIだけに限定した設問ではない点に留意。smrj.go.jp/research_case/questionnaire/…/202603_AI_report.pdf

[2] OpenAI Help Center「Does ChatGPT tell the truth?」(2026年7月確認)。ChatGPTは誤った、または誤解を招く出力をする場合があり、誤っていても自信があるように聞こえること、重要情報は信頼できる情報源での検証が必要であることを案内。help.openai.com/en/articles/8313428

[3] 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(2026年7月確認)。個人情報取扱事業者が個人情報を含む入力を行う場合の利用目的の確認、利用規約・プライバシーポリシーの確認等を案内。個別事案の法的判断は専門家・所管窓口へ。ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/

甲斐ショウジ

この記事を書いた人

甲斐ショウジ株式会社GMJ 代表取締役CTO兼CAIO

20年超のIT事業経験とGoogle関連事業での実績を基に、多数のAIシステムの開発を主導。AIとMEOで、小さなお店・中小企業の経営を強くする実践情報を発信しています。

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