「ご家族は何人ですか」——面接の空気を和らげるつもりの一言です。ただ、これは厚生労働省が就職差別につながるおそれがあると案内している事項に当たります。しかも、指摘された事案でいちばん多いのがこの「家族に関すること」です。この記事では、聞かない事項を先に決め、ChatGPTに質問案を作らせるときに何を渡し、出てきた案をどう点検するかを説明します。
この記事で分かること
- 実際に指摘された質問の内訳(何がいちばん多いのか)
- 就職差別につながるおそれがある14事項
- ChatGPTに質問案を作らせる前に渡すもの、作らせたあとの点検
- 聞きたかったことを、行動の質問へ置き換える方法

01いちばん多いのは、悪意のない一言
厚生労働省の特設サイトによると、応募者から「本人の適性・能力以外の事項を把握された」と指摘があった事案のうち、「家族に関すること」が41.8%を占めます。令和6年度にハローワークが把握した854件の内訳です。[1]
同サイトは、こうした質問について「面接の空気を和らげるために聞いてしまうケースが多いようです」と注意を促しています。つまり、多くは悪意ではなく、場をつなぐ一言として出ているということです。
だからこそ、その場の思いつきに任せず、事前に決めておく必要があります。
02聞かない「14事項」を、手元に置く
厚生労働省が挙げる、就職差別につながるおそれがある14事項です。[1]
「愛読書」「尊敬する人物」が入っている点は、意外に思うかもしれません。面接の定番として広まっている質問ほど、確認が要ります。

03ChatGPTに作らせる前に、聞かない事項を渡す
ここがAIを使うときの分かれ目です。
「小さな飲食店の面接で聞く質問を10個作って」とだけ頼むと、世の中に出回っている面接質問集をなぞった案が返ってきます。その中に、家族構成や出身地、愛読書がまぎれ込むことがあります。先に禁止事項を渡してから作らせます。
コピーして使えます
小さな店のアルバイト面接で使う共通質問を作ってください。 【必ず守ること】 次の事項は質問に含めないでください。 本籍・出生地/住宅状況/家族/生活環境・家庭環境/宗教/ 人生観・生活信条/思想/購読新聞・雑誌・愛読書/支持政党/ 尊敬する人物/労働組合・学生運動などの社会運動 【作ってほしいもの】 ・全員に同じ順番で聞く中心質問を5つ ・各質問で「何を確かめたいのか(この仕事に必要な行動)」を1行 ・回答が抽象的だったときの追加質問を1つずつ 性格の良し悪しではなく、仕事で実際にとる行動が見える質問にしてください。 勤務条件の確認は、上の禁止事項に触れない範囲で別枠にしてください。 【店の情報】 [業種・席数や規模・任せたい仕事・勤務時間帯]
04出てきた案は、1問ずつ点検する
作らせて終わりにしません。同じチャットで、今度は点検役として使います。
コピーして使えます
いま作った質問を、1問ずつ点検してください。 各質問について、 ・確かめている「仕事に必要な行動」は何か ・14事項(本籍/住宅/家族/生活環境/宗教/人生観/思想/愛読書/支持政党/ 尊敬する人物/社会運動)に触れていないか ・触れているなら、同じ目的を別の聞き方で達成できるか を表にしてください。 判断がつかないものは「要確認」と書いてください。 問題なしと断定しないでください。
最後の2行を入れます。AIに「大丈夫です」と言わせることが目的ではありません。迷うものを浮かび上がらせるのが目的です。要確認が残ったら、その質問は使わないか、都道府県労働局やハローワークに確認します。
05聞きたかったことは、行動の質問に置き換えられる
家族構成を聞きたくなる理由は、多くの場合「シフトに入れるかどうか」です。それなら、そのまま聞けます。
| 聞きたくなること | 置き換える質問 |
|---|---|
| ご家族は?(=続けられるか) | 勤務できる曜日と時間帯を教えてください |
| 実家は近い?(=通勤) | 通勤にかかる時間はどのくらいですか |
| ご趣味は?愛読書は?(=人柄) | 前の職場や学校で、続けて取り組んだことを教えてください |
| ご出身は?(=雑談) | 質問しない。雑談は店の話や仕事の説明で埋める |
勤務条件の確認は、聞いてよいことです。目的を「その人の背景」から「仕事でとる行動と条件」へ移すと、聞き方は自然に変わります。
06AIに、採否を決めさせない
厚生労働省は、AIを含むどのような選考方法であっても、応募者に広く門戸を開き、本人の適性・能力に基づく採用基準とする基本は変わらないとしています。[2]
応募者を自動で順位付けさせない。 点数を出せても、その根拠は説明できません。
応募書類をまとめてChatGPTへ渡さない。 氏名、連絡先、生年月日、写真を含む書類は入れません。使うのは、面接の質問案づくりと、自分が書いたメモの整理までです。線引きは安全な使い方の記事で扱っています。
AIの要約を評価そのものにしない。 評価表に書くのは、面接で実際にあった発言と行動です。
07まとめ ── 面接前の10分
- 3分 ── 14事項を印刷し、面接に関わる人全員に配る
- 5分 ── 禁止事項を渡した状態で、ChatGPTに共通質問を5つ作らせる
- 2分 ── 出てきた質問を1問ずつ点検し、「要確認」は使わない
求人文と評価表の作り方は小さなお店の求人と面接のやり方、採用後の30日は新人がすぐ辞めないお店の育て方で扱っています。
採用は店の判断であると同時に、応募者の人生に関わる判断です。効率より、公正さと説明できる基準を優先します。
本記事は公正な採用選考の考え方を紹介するもので、個別の法律判断を行うものではありません。判断に迷う場合は、都道府県労働局またはハローワークへご相談ください。
[1] 厚生労働省「公正な採用選考をめざして/採用選考時に配慮すべき事項」(2026年7月21日確認)。就職差別につながるおそれがある14事項(本人に責任のない事項4、本来自由であるべき事項7、採用選考の方法3)を掲載。「不適切な採用選考の実態」として、応募者から「本人の適性・能力以外の事項を把握された」と指摘があったもののうち「家族に関すること」の質問が多くを占めるとし、令和6年度にハローワークで把握した854件の内訳を示しています(家族に関すること41.8%、その他32.6%、思想・信条9.4%、住宅状況8.4%、本籍・出生地7.1%、健康診断0.7%)。kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html
[2] 厚生労働省「公正な採用選考をめざして よくある質問」(2026年7月21日確認)。AIを含むどのような選考方法であっても、応募者に広く門戸を開き、本人の適性・能力に基づく採用基準とする基本を守る必要があると明記されています。kouseisaiyou.mhlw.go.jp/question.html
