求人を出しても応募が来ない——その前に、求人文を見直してみてください。時給と勤務時間だけの求人は、どの店も同じに見えます。「アットホームな職場」では、実際の仕事が分かりません。求人は人を集める広告であると同時に、働き始める前の約束。約束として書ける材料を「仕事の基本カード」1枚にまとめるところから、ChatGPTと一緒に作り直します。
この記事で分かること
- 条件だけ・雰囲気だけの求人がどちらもダメな理由(と国の調査)
- 求人文の前に作る「仕事の基本カード」
- 「明るい人」を、面接で確認できる行動に変える方法
- 「感じが合う」で決めない面接——共通質問・評価表・聞かないこと

01条件だけの求人では、小さな店の魅力が消える
小さな店には、大手にない魅力があります。お客様の反応を近くで感じられる。商品が作られてから渡るまでを見られる。店全体の流れを覚えられる。店主に改善案を直接言える。——同時に、正直に伝えるべき大変さもあります。立ち仕事が続く、朝が早い、少人数だから一人の行動が店全体に影響する。
魅力だけを大きく見せて採用すると、入社後の「聞いてない」が増えます。両方書くことが、結局いちばんの近道です。
実際、国の調査では厳しい現実と希望の両方が見えています。2025年版小規模企業白書によると、人材不足と答えた小規模事業者の約6割が、直近3年間の採用で「予定人数には未達」。一方で、自社の差別化を意識している事業者や、SNSで事業活動を発信している事業者の方が「予定人数を採用できた」と答えた割合が高い傾向も示されています。[1] 条件で勝負できない小さな店ほど、「何の仕事か・何を大切にする店か」を具体的に伝える価値があるのです。
02求人文の前に、「仕事の基本カード」を作る
いきなりChatGPT(対話型のAIサービス)に「求人を書いて」と頼まず、まず募集する仕事を1枚にします。
【仕事の基本カード】 募集する理由: 雇用形態: 勤務する曜日・時間: 賃金・手当: 試用期間: 主な仕事: 1日の流れ: 最も忙しい時間帯: 仕事の大変な点: 仕事の面白い点: 最初の30日で覚えること: 教える担当: 一人で判断してはいけないこと: 店が大切にしていること: 応募前に正直に伝えること: 正式資料で確認が必要な労働条件:
ここで大原則がひとつ。賃金・労働時間・休日・保険・試用期間などの労働条件は、ChatGPTに考えさせません。雇用契約や就業規則など正式な資料から書き写します。厚生労働省は、募集時に募集条件を明示し、重要事項は書面で示す必要があると案内しています。公開前にハローワークや社会保険労務士へ確認するのが安全です。
03「明るい人」を、確認できる行動に変える
「どんな人が欲しいですか」と聞かれた店主は、たいてい「明るい人」「真面目な人」「気が利く人」と答えます。気持ちは分かりますが、意味が人によって違う言葉は、求人でも面接でも役に立ちません。実際の行動に変換します。
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次の「一緒に働きたい人」の表現を、 仕事中に確認できる具体的な行動へ変えてください。 条件: ・性格を決めつけない ・年齢、性別、出身、家族、思想・信条などを基準にしない ・職務に必要な行動だけにする ・入社後の教育で身につけられる行動と、 応募時に確認する行動を分ける ・1つの項目に1つの行動を書く [仕事の基本カード] [店主が考える、一緒に働きたい人]
04求人文の初稿を作り、3人の目で読む
基本カードができたら、求人文の初稿をChatGPTに頼みます。ポイントは、曖昧な言葉の置き換えと、労働条件を作らせない縛りです。
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次の仕事の基本カードから、小さな店の求人文を作ってください。 読者は、求人を初めて見る人です。次の順番で書いてください。 1. どんな店か 2. どんな1日を過ごすか 3. 主な仕事 4. この仕事の面白さ 5. 正直に伝える大変さ 6. 初日から30日までの教え方 7. 一緒に働くうえで大切な行動 8. 確認済みの労働条件 9. 応募後の流れ 「アットホーム」「やりがい」「誰でも簡単」などの曖昧な言葉は、 具体的な事実へ置き換えてください。 私が入力していない賃金、時間、休日、手当、保険、試用期間、 仕事内容、勤務地を作らないでください。 不足する法定事項は[正式資料で確認]と表示してください。 年齢、性別、出身、家族構成などを応募条件にしないでください。 [仕事の基本カード] [店の言葉で残したい表現]
できた文章は3人の目で読みます。店主の目(店の考え方と合っているか)、現場スタッフの目(忙しさや教え方が現実と合っているか)、初めて見る人の目(いつ・どこで・何をし・どう教わるかが分かるか)。求人文と入社後の体験が違えば、文章の完成度が高くても失敗です。

05面接は「感じが合う」で決めない ── 共通質問と評価表
会話が弾んだ。笑顔がよかった。趣味が合った。——この感覚だけで決めると、仕事に必要なことを確認できません。厚生労働省の公正な採用選考チェックポイントも、面接前に質問項目と評価基準を決めておくことを求めています。[2]
やることは2つ。全員に同じ中心質問をすること、答えを「確認できた事実」で記録することです。質問は正解当てではなく、過去の行動を聞きます。
ChatGPTの出番は、匿名化した面接メモの整理までです。応募書類・氏名・住所・顔写真を渡して採否を決めさせることはしません。
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次の匿名化した面接メモを、評価表の項目へ整理してください。 ・発言していないことを補わない ・性格や将来を推測しない ・職務に必要な行動について、確認できた事実だけを書く ・面接官の感想は「印象」と表示し、事実と分ける ・採用、不採用、順位付けを決めない ・年齢、性別、出身、家族、健康、思想・信条などを評価しない 最後に、職務に関して追加確認が必要な質問だけを示してください。 [匿名化した面接メモ] [事前に決めた評価項目]
もうひとつ、聞かないことを先に決めます。本籍・出生地、家族構成や家族の職業、住宅事情、人生観・尊敬する人・愛読書、支持政党——厚生労働省は、本人の適性・能力と関係のないこれらの事項を把握することは就職差別につながるおそれがあると案内しています。[2] 空気を和らげるつもりの雑談が、この線を越えないように。勤務条件の確認は「この曜日・時間に勤務できますか」と、全員に同じ形で聞けば足ります。
06まとめ ── 今週の60分でやること
- 募集する仕事の「基本カード」を1枚作る(労働条件は正式資料から書き写す)
- 「一緒に働きたい人」を、確認できる行動に変換する
- 基本カードから求人文の初稿を作り、3人の目で読む
- 全員に聞く共通質問4つと評価表を決める(聞かないことも先に決める)
- 公開後は応募数でなく「どこで止まったか」を記録する
採用は、店にとって大きな判断であると同時に、応募者の人生に関わる判断です。効率より、公正さと説明できる基準を優先する——それが小さな店の信用にもなります。次の記事では、採用した人が辞めない仕組み——初日の迎え方と30日育成表を扱います。
[1] 中小企業庁「2025年版 小規模企業白書」第2部第1章第1節(2026年7月確認)。人材が不足していると回答した小規模事業者の約6割が、直近3年間の採用実績を「予定人数には未達」と回答(第2-1-32図)。差別化を意識している事業者、SNSを活用して発信している事業者の方が「予定人数を採用」と回答した割合が高い(第2-1-33図・第2-1-35図)。いずれも可能性の示唆であり、因果関係を断定するものではありません。chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/shokibo/b2_1_1.html
[2] 厚生労働省「公正な採用選考チェックポイント」(2026年7月確認)。面接の実施に先立ち、職務遂行に必要な適性・能力を評価する観点から質問項目や評価基準をあらかじめ決めること、本籍・出生地、家族構成・家族の職業、人生観・生活信条・尊敬する人・愛読書などを尋ねないことなどを確認項目として示す。mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo2.htm
