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AIで作った投稿を公開する前のチェック ── 見るのは「事実・権利・誠実さ」の3つだけ

前回は入力の線引き(青・黄・赤)を作りました。今回は出口側——公開の直前に何を見るかです。チェック項目が多すぎると、忙しい日に使われません。だから3つに絞ります。本当か(事実)。使ってよいか(権利)。お客様を裏切らないか(誠実さ)。公開前の3分で見るのはこれだけです。

この記事で分かること

  1. 他店の「雰囲気」を持ってこない依頼のしかた(要素への分解)
  2. 生成画像の1問テスト「実物を同じ約束として渡せるか」
  3. 自動化を段階0から進める順番と、店の声まで自動化しない理由
  4. 公開前3チェックのプロンプトと、間違って公開したときの手順
焼き菓子店のカウンターで、公開前の投稿を指差し確認する店主の手元と3項目のチェックカード
公開前の3分。「本当か・使ってよいか・裏切らないか」を指差しで

01他店の「雰囲気」を、そのまま持ってこない

「この人気店の文章を、うちの店向けに書き換えて」「有名キャラクターでかわいくして」——早く形になりそうですが、他者の文章・写真・ロゴ・キャラクターには権利があります。ChatGPTへ画像をアップロードできたことは、利用の許可を得たことではありません。文化庁のガイダンスも、業務でAIを使う側に、利用規約の確認・内部ルールの整備・公開前の類似性確認を案内しています。[2]

安全側に寄せるコツは、固有名詞で真似を頼まず、欲しい要素を言葉に分解することです。

避ける依頼:
人気店AのInstagramと同じ文章にして。
有名キャラクターBを使って。

要素へ分解した依頼:
住宅街の小さな焼き菓子店らしい、落ち着いた案内にしてください。
色は生成り、深い赤、木の茶色。
午後の自然光が入る、静かな食卓の雰囲気。
文章は短く、誇張せず、商品の温度や香りを具体的に伝える。
既存の店舗、作品、ロゴ、キャラクターに似せない。

公開前には、見覚えのあるロゴやキャラクターが入っていないか、元にした文章と構成が近すぎないか、画像検索で似たものが見つからないかを確認。判断が難しければ公開を止めて専門家へ。

02生成画像は「きれいか」より「約束と合っているか」

生成画像は試作を速くしますが、商品や店内を実物より良く見せるために使うと、お客様との約束がずれます。消費者庁は、実際より著しく優良・有利に見せて誤認させる表示を禁止しています。[3] 難しい法律用語より、店ではこの1問で足ります。

この画像を見て来店したお客様へ、実物を同じ約束として渡せるか。

実物を見せる 商品本体 箱・包装 1個の大きさ セットの数量 見た目で選ばれるものは実物 生成画像を使える 季節の背景案 POPの配置案 撮影前の構図見本 実在しない一般的な利用場面 雰囲気と試作のための道具 公開しない 実物より大きい商品 実物にない飾り・付属品 未確認の原材料・効果・価格 他店のロゴや包装に似た画像 「画像はイメージです」でも不可 お客様が大きさ・内容・効果を誤解する画像は、表示を付ける前に使い方を直す
焼き菓子店が決めた3分類。店ごとに1枚作っておくと迷わない

もうひとつの線引きが高リスク分野の分離です。食品・アレルギー、美容・健康、法律・税務では、「読みやすい文章を作ること」と「判断すること」を分けます。アレルギー対応の可否をAIに決めさせない。「必ず治る」を文章が上手だからと使わない。国税庁の公式AIチャットボットでさえ「回答は一般的事項であり、申告は自身の判断と責任で」と案内しています。[4] 一般のChatGPTの税務回答をそのまま申告に使わない理由が、よく分かります。

03自動化は、いきなり公開までつながない

慣れてくると自動返信・自動投稿をつなぎたくなりますが、最初から公開までつなぐと間違いも自動で広がります。段階で考えます——といっても、まずは段階0だけで十分です。

段階0 人が依頼し、人が確認し、人が公開する(本書の読者はまずここだけで十分) AIは下書きまで。公開ボタンは必ず人 段階1 定時に下書きだけ自動で作る。公開せず、人が確認する箱に置く 段階2 正本と照合できた案だけ承認待ちに。要確認が1つでもあれば止める 段階3 十分に試験した低リスクの定型情報だけ自動公開。停止方法と担当を先に決める 価格・在庫・予約・個人情報・食品安全・健康・苦情対応は、段階3でも人の承認を残す
確認するのは「動くか」ではなく「止められるか」

そして、店の声まで自動化しないこと。苦情に整いすぎた定型文だけを返す。悲しい出来事があった日も販促が自動で流れる——それでは店の人間の気配が失われます。公開前に1文だけでも自分の言葉に直し、音読して「自分が店頭で言えるか」を確かめる。言えない文章は公開しない。これが一番シンプルな品質基準です。

04公開前は「事実・権利・誠実さ」── AIを別の目にする

最終確認をChatGPTだけに任せることはできませんが、人が見る前の「別の目」にはできます。

コピーして使えます

あなたは、小さなお店の公開前確認担当です。

以下の案内文と画像説明を、公開可否ではなく、
「人が確認すべき点を見つける」目的で点検してください。

3つに分けてください。
1. 事実 ── 日付、曜日、価格、数量、在庫、条件、原材料、効果
2. 権利 ── 個人情報、著作権、ロゴ、キャラクター、素材の出所
3. お客様への誠実さ ── 実物との違い、誇張、条件の見えにくさ

ルール:
- 正しいと断定しない
- 元資料がない項目は「正本で要確認」と書く
- 問題がないように見える項目も、確認方法を書く
- 食品、アレルギー、美容、健康、法律、税務は、専門確認の要否を示す
- 最後に「公開を止める項目」を先頭から3つまで出す

[確定情報](最新の価格表、営業日など必要な範囲だけ貼る)
[案内文](ここへ貼る)
[画像の内容](ここへ書く)

AIの点検後、人が正本と実物を見る。この2段階にすると、忙しい日でも確認項目を思い出す負担が減ります。

レジ横に貼られた、3項目だけの公開前チェックカード
覚え方は短くていい。「本当か。使ってよいか。お客様を裏切らないか」

それでも間違いは起きます。起きたら静かに書き換えて終わらせないこと。①広がるのを止める ②元の状態を記録する ③正しい情報を確定する ④同じ場所で訂正する ⑤影響を受けた人へ直接伝える ⑥同じ間違いを防ぐ仕組みに直す——この順番を決めておけば、間違いは店の信用を壊さず、むしろ誠実さの証明になります。

05「ルール1枚」が、いちばん小さなAI教育

国の調査では、AI導入の壁として「高コスト」46.9%に続き、「社内のAIノウハウ不足」42.0%・「社内のAI人材不足」38.8%が上位でした。自由回答には、もっともらしい嘘(ハルシネーション)への不安に加えて、「人によるリテラシーの差」「現場で教育・指導できる体制の欠如」を指摘する声が並びます。[1]

小さな店に研修制度は要りません。この2記事で作った「3色の線引き+正本の一覧+公開前3チェック」を1枚にまとめて、レジ裏に貼る。それがスタッフ全員のリテラシー差を埋める、いちばん小さなAI教育です。

06まとめ ── 公開前3分の習慣

  • 真似したい他店の投稿は、固有名詞ではなく「要素」に分解して頼む
  • 生成画像は1問テスト——「実物を同じ約束として渡せるか」
  • 食品・健康・税務は「文章作り」と「判断」を分ける
  • 自動化は段階0から。公開ボタンは人が押す
  • 公開前3分で「事実・権利・誠実さ」。AIの点検→人が正本と実物を見る

安全ルールは、ChatGPTを縛るためではなく、使い続けるためにあります。線引きがあるから、安心して速く試せる。次はいよいよ最終章——ここまでの全部を30日のプランに組み立てて、店を変える1か月を設計します。

[1] 独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」報告書 表8(2026年3月公表・2026年7月確認)。AI導入の阻害要因(複数回答・n=1,636)は「導入にあたっての高コスト」46.9%、「社内のAIノウハウ不足」42.0%、「社内のAI人材不足」38.8%が上位。自由回答ではハルシネーションへの不安、「人によるリテラシーの差」「現場で教育・指導できる体制の欠如」の指摘が見られる。回答企業の認識の集計であり、因果関係を断定するものではありません。smrj.go.jp/research_case/questionnaire/…/202603_AI_report.pdf

[2] 文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」17〜20ページ(2026年7月確認)。業務利用者による利用規約の確認、内部ルール等の予防措置、生成物の利用前の既存著作物との類似性確認等を案内。個別の侵害判断は専門家へ。bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/94097701_01.pdf

[3] 消費者庁「表示規制の概要」(2026年7月確認)。商品・サービスの内容を実際より著しく優良に、取引条件を著しく有利に示す表示の禁止と、効果・性能表示への合理的根拠の考え方を案内。caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/

[4] 国税庁「チャットボット(ふたば)に質問する」(2026年7月確認)。個人情報を入力しないこと、回答は一般的事項であり、確定申告等は自己の判断と責任で行うことを案内。nta.go.jp/taxes/shiraberu/chatbot/

甲斐ショウジ

この記事を書いた人

甲斐ショウジ株式会社GMJ 代表取締役CTO兼CAIO

20年超のIT事業経験とGoogle関連事業での実績を基に、多数のAIシステムの開発を主導。AIとMEOで、小さなお店・中小企業の経営を強くする実践情報を発信しています。

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