CTOブログ

健康・食品・お金の話は、ChatGPTに「文章」は任せても「判断」は任せない ── 高リスク分野の線の引き方

ChatGPTは、分かりやすい説明文を作れます。だからこそ、食品・アレルギー・健康・お金の話では、少し立ち止まります。

きれいな文章ほど、つい信じてしまうからです。この記事では、こうした間違えると被害が大きい分野で、ChatGPTに「文章作り」は任せても「判断」は任せない、その線の引き方を説明します。

この記事で分かること

  1. お客様自身が、AIの「判断」を高リスクと見ている(調査データ)
  2. 全分野に効く「任せる/任せない」の線引き
  3. 食品・アレルギー、美容・健康、法律・税務の具体的な線
  4. 専門家へ渡す前に整理する4点
カウンターを2つに分け、左に文章作りの道具(PC・下書き)、右に判断の道具(規程冊子・仕入規格書・虫眼鏡)を置いた様子
左は文章作り、右は判断。混ぜないことが安全につながります

01文章がうまいほど、危うい

「たぶん大丈夫です」——ChatGPTがなめらかにそう書いたとき、根拠まで確かめる人は多くありません。文章の質と、内容の正しさは別のものです。

そして、これはお客様の側も感じています。総務省の「令和7年版 情報通信白書」によると、AIの不適切な判断が人の生命や身体に損害を与える可能性をリスクだと感じる人は61.7%、専門資格がなければ断定できないことをAIが回答する可能性をリスクだと感じる人は57.9%でした。[1]

お客様も、AIの「判断」を高リスクと見ている 「リスクだと感じる」(非常に+どちらかと言えば)・n=1,030 AIの判断が、人の生命や身体に損害を与える可能性 61.7% 専門資格がなければ断定できないことを、AIが回答する可能性 57.9%
出典: 総務省「令和7年版 情報通信白書」図表I-1-2-11

つまり、店が「文章と判断を分ける」のは、慎重すぎる態度ではありません。お客様の期待に沿う行為です。

02共通の線引き ── 任せる「文章」、任せない「判断」

分野が違っても、線の引き方は同じです。ChatGPTには、事実を整理して読みやすくする作業を任せます。事実かどうかを決める判断は、任せません。

ChatGPTに任せてよい(文章・整理) 任せない(判断・断定)
確認済みの情報を、読みやすい案内文にする 確認していないことを「大丈夫」と決める
確認すべき項目や質問を洗い出す 名前や見た目から中身を推測する
専門家へ聞く論点を整理する 診断・効果・安全性を最終判断する
公式ページを探す検索語を作る 「必ず」「絶対」などの強い表現を作る

03食品・アレルギー

アレルギーは、健康被害に直結します。ここは特に厳密に分けます。

原材料確認表と仕入先の規格書を虚眼鏡で照合する様子。表の1行が赤で囲まれている
推測せず、仕入先の規格書という「正本」に当てて確認します

任せてよい補助

  • 原材料確認表の項目を作る
  • 仕入先へ確認する質問を整理する
  • 確定済みの情報を、読みやすい案内文にする
  • 店内で聞かれた質問を、FAQ候補へまとめる

任せない判断

  • 「この商品は安全に食べられる」と決める
  • レシピ名だけから原材料を推測する
  • 交差接触(製造の途中で他の材料が混ざること)の可能性を推測する
  • 「小麦不使用」「アレルギー対応」などの表示を作る
  • お客様個人の症状に対して、食べてよいか答える

消費者庁は、食物アレルギーが健康被害につながることを説明し、容器包装された加工食品に、定められた特定原材料を含む旨の表示を義務付けています。対象や案内は改正されることがあるため、最新の公式情報・仕入規格書・レシピ・製造現場を確認します。[2]

「たぶん入っていません」は、答えではありません。確認できないときは、確認できないと伝えます。

04美容・健康・施術

ChatGPTには、予約前に確認する一般的な質問、説明文の読みやすさ、専門家へ相談する論点の整理を頼めます。

一方で、診断、治療、薬、病気への効果、安全性の最終判断は任せません。「必ず治る」「1回で改善」「副作用なし」のような強い表現を、文章が上手だからという理由で使わないでください。施術前後の画像も、角度・光・表情・加工条件を変えて効果を大きく見せないようにします。

効果や安全性をうたう表現は、景品表示法や医薬品医療機器等法(薬機法)などの規制対象になることがあります。表現に迷ったら、専門家や所管の公式情報で確認してください。

05法律・契約・税務・労務

お金や契約の話も、最終判断は所管官庁の最新資料と専門家へ戻します。ChatGPTは、その手前まで使います。

  • 契約書で分からない言葉を洗い出す
  • 税理士や専門家へ聞く質問を整理する
  • 公式ページを探す検索語を作る
  • 自店の状況と、まだ不明な点を1枚にする

国税庁の公式AIチャットボットでさえ、個人情報を入力しないこと、回答は一般的な事項であり、申告などの手続は利用者自身の判断と責任で行うことを案内しています。[3] 公式のAIですらそうなのですから、一般のChatGPTの税務回答を、そのまま申告に使わないのは当然です。

専門家へ渡す前は、次の4点を整理します。この形にすると、専門家が確認しやすくなります。

コピーして使えます

次の内容を、専門家へ相談する前の整理として、4つに分けてまとめてください。

1. 店で起きている事実
2. すでに確認した正式資料(公式ページ・規格書など)
3. ChatGPTが出した案や論点(あくまで下案)
4. まだ判断できない、専門家に聞くべき質問

断定はしないでください。
2で確認できていないことは、3や4へ回してください。

[相談したい状況をここに書く]

06どの分野にも効く、1つの言葉

食品でも、健康でも、お金でも、迷ったときに戻る言葉は同じです。

「確認できないときは、確認できないと伝える」。

ChatGPTは、分からないときでも自然な文章を続けられます。だからこそ、曖昧なまま断定させないのは、店側の役目です。空欄は、埋めるのではなく、確認するために残します。

07まとめ ── 文章は任せ、判断は残す

  • お客様も高リスクと見ている ── 生命身体61.7%/専門領域57.9%がAIの判断をリスクと認識
  • 文章は任せ、判断は任せない ── 事実の整理はAI、事実かどうかの判断は人
  • 食品・アレルギーは推測させない ── 規格書という正本で確認。「たぶん」は答えでない
  • 美容・健康は効果を断定させない ── 強い表現・盛った画像を作らない
  • お金・契約は専門家へ ── 4点に整理して渡す

入力してよい情報の線引きは別の記事、公開前の最終チェックは公開前チェックの記事にまとめています。文章を任せて時間を作り、判断は店に残す。それが、ChatGPTを長く安全に使うコツです。

[1] 総務省「令和7年版 情報通信白書」図表I-1-2-11「AI利用リスクに関する考え方」(2026年7月22日確認)。回答者1,030人。「AIによる不適切な判断が、結果として人間の生命や身体に損害を与える可能性があること」に「非常にリスクだと感じる」28.2%+「どちらかと言えばリスクだと感じる」33.5%=61.7%。「専門資格がなければ断定できないことをAIが回答する可能性があること」に25.6%+32.3%=57.9%。個人を対象とした調査で、店舗経営者に限った数字ではない。https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd112210.html

[2] 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」。特定原材料等の表示義務。対象・運用は改正されることがあるため公式の最新情報を確認する。https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/

[3] 国税庁「チャットボット(ふたば)に質問する」(2026年7月18日確認)。個人情報を入力しないこと、回答は一般的な事項であり、確定申告等は自己の判断と責任で行うことが案内されている。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/chatbot/

甲斐ショウジ

この記事を書いた人

甲斐ショウジ株式会社GMJ 代表取締役CTO兼CAIO

20年超のIT事業経験とGoogle関連事業での実績を基に、多数のAIシステムの開発を主導。AIとMEOで、小さなお店・中小企業の経営を強くする実践情報を発信しています。

CTOブログの記事一覧へ

関連記事

TOP
目次