「8食も多く売れた」——なのに月末の手元は寂しい。値引きキャンペーンでよく起きることです。原因は簡単で、売れた数は増えても、1食あたり残る額が減っているから。始める前に「何食売れば元が取れるか」を計算しておけば、売れるほど苦しくなるキャンペーンを避けられます。電卓とChatGPTがあれば10分の作業です。
この記事で分かること
- 販促費だけを回収するのに必要な追加販売数の出し方
- 「値引きは定価で買う人にも適用される」という落とし穴
- 通常日の粗利を保つのに本当は何食必要か(ランチ店の実例)
- 7日後の振り返りプロンプト(計算式をすべて出させる)

01まず、販促費だけを回収する数を出す
損益分岐点とは、売上と費用が同じになり利益がゼロになる地点のこと。中小機構のJ-Net21でも、費用を売るほど増える変動費と売上にかかわらず発生する固定費に分けて考える方法が説明されています。[1] 難しい話に見えますが、キャンペーンなら最初はこの1行で足ります。
キャンペーン費用 ÷ 1個売るごとに残る額 = 費用を回収するために必要な追加販売数
日替わり定食(通常1,000円・原価420円)を100円引きにし、告知に6,000円かけるとします。
キャンペーン価格 900円 1食原価 420円 1食あたり残る額 480円 告知費用 6,000円 6,000円 ÷ 480円 = 12.5食 → 最低13食の追加販売が必要
ここまでは多くの店が計算します。問題はこの先です。
02落とし穴 ── 値引きは「定価で買う人」にも適用される
13食多く売れば元が取れる、とはなりません。いつもなら1,000円で買っていたお客様にも、100円引きが適用されるからです。通常日と並べて比べます。
では、通常日と同じ粗利額を保つには何食必要なのか。
(通常日の粗利26,100円 + 告知費6,000円)÷ 480円 = 66.875食 → 少なくとも67食 つまり、通常の45食より22食も多く売る必要がある。
ここで問うべきは「22食増やせるか」ではありません。席・仕込み・スタッフ・待ち時間は、その22食に耐えられるかです。始める前に考えれば、もうけを削りながら現場だけが疲れる企画を避けられます。
037日後に、回収できたかを確かめる
やった後の確認も、順番を決めておけば5分です。①対象商品の販売数 ②通常時と比べた追加販売数 ③値引き後の1個あたり粗利 ④販促費 ⑤追加の材料・包装・作業時間 ⑥次回来店や関連商品の購入——この6つ。
コピーして使えます
次のキャンペーン結果を振り返ってください。 1. 通常時の販売数、売上、粗利 2. キャンペーン時の販売数、売上、値引き後粗利 3. 販促費と追加費用 4. 通常時と比べた差額 5. 販売数は増えたが、残る額が減っていないか 6. 次回来店や関連購入で確認できたこと 7. まだ分からないこと 8. 続ける、直す、止めるの仮判断 すべての計算式を表示してください。 不足する数字は0円とせず、[要確認]としてください。 この施策だけが売上や再来店の原因だと断定しないでください。 [通常時の数字] [キャンペーン時の数字] [営業中に起きたこと]
「計算式をすべて表示」は必須です。AIは計算を間違えることがあるので、過程を見えるようにして大事な数字は電卓で検算します。

04まとめ ── 次の企画を始める前に
- 「販促費 ÷ 1個あたり残る額」で最低ラインを出す
- 定価で買う人にも値引きが効くことを、通常日と並べて計算する
- 通常日の粗利を保つ必要数を出し、現場が耐えられるか考える
- 7日後に6項目で振り返る(3と5を飛ばさない)
- 計算はすべて式を表示させ、大事な数字は電卓で検算する
商品ごとの粗利を先に見える化する方法はもうけの見える化、値引き以外で利益を作る方法は値上げの伝え方、企画そのものの設計は販促の記事で扱っています。キャンペーンをやめる判断も、立派な改善です。売った努力が無駄になるのではなく、次に同じ赤字を出さないためのデータが残ります。
[1] J-Net21(独立行政法人中小企業基盤整備機構)「損益分岐点の計算方法と経営改善に向けた活用方法を教えてください。」(2026年7月確認)。損益分岐点を利益がゼロとなる売上規模として説明し、費用を販売量に応じて増減する変動費と、売上にかかわらず発生する固定費に分けて算出する方法を紹介している。j-net21.smrj.go.jp/solution/qa/accounting/Q0240.html
