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お客様が来なくなった理由の調べ方 ── 想像で決めず、店にある言葉から仮説を作る

一度来たお客様が、2回目に来ない。その理由を、店主はたいてい自分の頭の中で埋めます。料金が高かったのか、接客が合わなかったのか——どれも可能性はありますが、確認していない以上どれも仮説です。仮説を事実として扱うと、直す場所を間違えます。この記事では、想像で埋める代わりに、店にすでにある言葉から仮説を組み立てる手順を説明します。

この記事で分かること

  1. お客様が黙って離れるのは珍しくない、という前提(調査データ)
  2. 来店が続かない理由のうち、店が直せるもの
  3. 新しくアンケートを作らずに、材料を集める6か所
  4. ChatGPTに「事実と仮説を混ぜずに」仕分けさせるプロンプト
閉店後の店のカウンターに開かれた予約台帳。左ページには記入があり、右ページは空白のまま
初回の記録は残っている。書かれなかったのは、その次の予定のほう

01理由は、想像で埋まってしまう

料金が高かったのだろうか。満足しなかったのだろうか。接客が合わなかったのだろうか。別の店へ行ったのだろうか。

どれもあり得ます。ただ、確認できていない段階では、どれも同じ重さの仮説です。ここで1つを事実に格上げすると、値下げやメッセージ増量といった、効くかどうか分からない対策に時間とお金を使うことになります。

そもそも、お客様が黙って離れるのは珍しいことではありません。消費者庁の「令和7年度消費者意識基本調査」では、この1年間に消費者被害を経験したと答えた人が書いた856件の事例のうち、どこにも相談・申出を「していない」が42.6%、「した」が36.1%でした。さらに、相談・申出をした321件を見ても、伝えた相手は身近な人が最も多く、商品・サービスを売った販売店や代理店などへ伝えた人は19.7%にとどまります(複数回答)。[1]

被害と感じた856件のうち、誰かに伝えたか 36.1% 42.6% 21.3% 相談・申出をした 誰にもしていない 無回答 伝えた321件でも、相手は店とは限らない(複数回答) 家族・知人・同僚など 39.8% メーカーなどの事業者 35.6% 販売店・代理店など 19.7% 消費者庁「令和7年度消費者意識基本調査」より作成。対象は消費者被害・トラブルであり、 来店客が感じる軽い不満とは別のもの。
強い不満でさえ、店まで届くとは限らない

この調査が扱っているのは「被害」と感じるほど強い経験で、日々の来店で感じる小さな引っかかりとは違います。それでも、不満が店に届かないまま終わることがあるのは読み取れます。届いていないだけで、理由が無いわけではありません。

02来ない理由は、不満だけではない

来店が続かない理由を並べてみると、不満以外がかなり混ざります。

  • 次に行く時期を忘れた
  • 忙しくて予約を後回しにした
  • 予約ページで、どのメニューを選べばよいか分からなかった
  • 今は必要を感じていない
  • 引っ越しや予定の変更があった
  • 連絡を受け取りたくなかった

このうち、店が直せるものがあります。次回の目安を口頭でしか伝えていなかった。予約画面のメニュー名が、店の中だけで通じる言葉になっていた。こうした場所は、接客の良し悪しとは別に存在します。

店のカウンターに置かれたスマートフォン。予約画面に似たようなメニューが並んでいる
「どれを選べばいいか分からない」で止まった画面は、不満として言葉にならない

来店が続かない原因を、お客様の気持ちの問題にして終わらせない。ここが出発点です。

03材料は、すでに店の中にある

新しくアンケートを作る前に、手元にある言葉を集めます。

  • 公開されている口コミ
  • 来店後アンケートの自由記述
  • 店頭で言われたこと
  • LINEやメールの問い合わせ
  • 予約変更やキャンセルのときに伝えられた理由
  • スタッフが何度も受けている質問

集めたら、個人が特定できる情報を外します。氏名、連絡先、予約日時、体の状態、既往歴、施術記録、購入履歴の詳細は、ChatGPTへ貼り付けません。残すのは「40代女性・3回目」のように、改善を考えるために必要な粒度だけです。この線引きは安全な使い方の記事でも扱っています。

04ChatGPTには、4つに分けてもらう

集めた言葉を、4つに仕分けます。分ける作業そのものは単純ですが、件数がまとまると人手では見落とします

集めた言葉 口コミ・問い合わせ・店頭の一言 1 満足 続けること 2 要望 少し変えると喜ばれること 3 不満 早めに確認して直すこと 4 妨げ 再来店を妨げている可能性がある言葉 例:「次はいつ来ればいいのか分からなくなった」 + 繰り返し出ている質問 件数が多いほど、直す優先度が上がる 4に入った言葉は不満とは限らない。「分からなかった」も再来店を止める。
4つ目は、強い言葉ではないので見落としやすい

ChatGPTの通常の画面に、匿名化した言葉をそのまま貼り付けて指示します。

コピーして使えます

以下は、個人情報を除いた口コミ、アンケート、問い合わせの要約です。

内容を、
1. 満足
2. 要望
3. 不満
4. 再来店を妨げる可能性がある言葉
5. 繰り返し出ている質問
に分けてください。

各項目について、
・お客様の言葉
・店が確認できる事実
・考えられる仮説
・次に確認すること
・改善できる接点(来店前/店内/会計/来店後)
を示してください。

事実と仮説を混ぜないでください。
少数の意見を、全顧客の意見として一般化しないでください。

[匿名化した言葉を貼る]

整体院で試したときは、6件の言葉からこう見えました。

「説明が分かりやすく、初めてでも安心できた」
 → 満足。続けること。

「次はいつ来ればいいのか、帰ってから分からなくなった」
 → 妨げ。次回の目安を、口頭ではなく書いて渡す。

「予約ページで、どのメニューを選ぶのか迷った」
 → 妨げ。直す場所は接客ではなく予約画面。

6件で全てのお客様を代表することはできません。それでも、直す候補は具体的になります。「満足度を上げる」ではなく「次回の目安を紙に書いて渡す」まで降りてくると、今週から着手できます。

05月末は、名前ではなく匿名の集計で振り返る

月末に、来なかったお客様の名前を一人ずつChatGPTへ渡す必要はありません。匿名の集計で足ります

【初回来店】30人
【45日以内の再来店】12人
【会計時の再予約】8人
【再予約後の来店】7人
【来店後メッセージ送信】24人
【配信停止希望】1人
【同じ問い合わせ】9件

【分かっている理由】
・転居 1件
・予定が合わない 3件
・予約メニューが分からない 2件

【お客様から実際に聞いた言葉】
・次に行く時期を忘れた
・予約画面で迷った
・料金をもう一度確認したかった

この集計を貼って、次のように頼みます。

コピーして使えます

次の再来店記録を振り返ってください。

1. 数字とお客様の言葉から確認できる事実
2. 分かっている離脱理由
3. まだ分からないこと
4. 考えられる仮説。必ず「仮説」と表示する
5. 来店前、店内、会計、来店後のどこを直すか
6. 次の30日で1つだけ試す改善
7. 改善を確認する数字

個々のお客様の性格、経済状況、健康状態を推測しないでください。
この施策だけが再来店の原因だと断定しないでください。

[匿名の集計]
[お客様の言葉]
[今月変更したこと]

同じ問い合わせが9件あり、その多くが予約メニューの選び方だったなら、翌月やることは決まります。メッセージの本数を増やす前に、予約画面を直す。数字の見方そのものは週次レビューの記事で扱っています。

06やってはいけない3つ

個々のお客様について「なぜ来ないか」を推測させない。 名前や記録を渡して、性格や経済状況、健康状態を推測させることはできません。見るのは匿名化した言葉と、全体の傾向です。

1件の言葉を、全体の声として扱わない。 強い言葉ほど印象に残りますが、6件は6件です。同じ内容が繰り返し出ているかどうかで重みを判断します。

理由を気持ちの問題にして終わらせない。 「合わなかったのだろう」で止めると、直せる場所が残ったままになります。案内、予約方法、価格表示のどこに引っかかりがあるかを先に見ます。

07まとめ ── 今週の30分

  • 6か所から言葉を集めて、個人情報を外す(15分)
  • ChatGPTで4つに仕分け、直せる接点を書き出す(10分)
  • 直す場所を1つ決めて、確認する数字を決める(5分)

理由を想像で埋めるのをやめると、直す場所が具体的になります。再来店の仕組みそのものはリピーターが増えないお店の直し方、口コミへの返信は低評価が付いた夜にやることで扱っています。まず、店にすでにある言葉を読むところから始めてください

[1] 消費者庁「令和7年度消費者意識基本調査」(2026年7月21日確認)。調査時期は令和7年11月10日〜26日、母集団は全国の満15歳以上の日本国籍を有する者、標本数10,000人、有効回収数5,473人(54.7%)、層化2段無作為抽出法、郵送配布・郵送回収(WEB回答併用)。この1年間の消費者被害経験が「ある」と回答した1,099人のうち733人が記入した856件の被害事例について、相談又は申出を「した」36.1%、「誰にもしていない」42.6%、無回答21.3%。相談又は申出をした321件の相手は「家族、知人、同僚などの身近な人」39.8%、「商品やサービスの提供元であるメーカーなどの事業者」35.6%、「商品・サービスの勧誘や販売を行う販売店、代理店など」19.7%(複数回答)。消費者被害・トラブルについての調査であり、来店客が感じる軽い不満と同じものではありません。caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/research_report/survey_002/

甲斐ショウジ

この記事を書いた人

甲斐ショウジ株式会社GMJ 代表取締役CTO兼CAIO

20年超のIT事業経験とGoogle関連事業での実績を基に、多数のAIシステムの開発を主導。AIとMEOで、小さなお店・中小企業の経営を強くする実践情報を発信しています。

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