このたびの令和8年熊本地震により被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。一日も早く穏やかな日常が戻りますよう、お祈り申し上げます。
2026年7月28日16時27分、熊本で震度7の地震がありました。私はその場にいました。2016年4月にも、同じ場所で2度の震度7を経験しています。
その2日後に「地震ログ」というサイトを作り、1日で公開しました。大きな地震のあと、その後の揺れがどう続いているかを、同じ形式で記録して見せるサイトです。
非営利で運営しています。広告も課金もアフィリエイトもありません。この記事は、何を考えて作り、そして何を作らないと決めたかの記録です。
この記事で分かること
- 地震のあと、本当に知りたかったのは何だったか
- 記録サイトとして何ができるか
- 作るときに決めた4つの線(やらないことの線引き)
- 震度7の2日後に動けた理由

01知りたかったのは、地震の大きさではなかった
揺れが続いている間、夜になると緊急地震速報のライブ配信をつけたまま横になっていました。そこで確かめたかったのは、地震そのものの大きさではありません。
- いま自分がいる場所で、どのくらいの間隔で、どのくらいの強さの揺れが起きているのか
- そのペースは昨日より落ちているのか、増えているのか
- そして、10年前はどうだったのか
10年前を経験しているぶん、「あのときはこうだった」という記憶はあります。でも記憶は当てになりません。数字で並べて見たかった。探した範囲では、その形で見られる場所が見つかりませんでした。だから作りました。
既存の地震情報は震源が基準です。マグニチュードがいくつで、どこが震源か。しかし不安なときに知りたいのは震源の大きさではなく、自分の足元で何が起きているかです。地震ログは、そこだけを見せます。
平成28年熊本地震では、4月14日21時26分にM6.5・最大震度7の地震が起きたあと、およそ28時間後の4月16日1時25分に、より大きなM7.3・最大震度7が発生しました[1]。「最初の大きな揺れが本震とは限らない」。この土地で暮らす人にとって、これがいちばん重い事実です。
02何ができるサイトか
最初の画面で「いまどうなっているか」がつかめることを最優先にしました。
| 機能 | できること |
|---|---|
| 現在の状況 | 最後の揺れ、直近24時間の回数、最大震度、累計を最初の画面に集約 |
| タイムライン | すべて・日別・ニュース・余震リストを目的に合わせて切り替え |
| 地点別記録 | 震源の規模ではなく、観測地点ごとの回数と最大震度 |
| 震源の分布 | 地図と活断層の上で、記録された震源を1件ずつ確認 |
| 過去の地震 | 平成28年熊本地震も同じレイアウトで記録 |
| 配信ビュー | 操作部品のない16対9専用表示 |
使う場面は「夜中・暗い部屋・ベッドの中・スマートフォン・不安」だと分かっていたので、背景は暗く、彩度は落とし、煽らない作りにしました。画面の中で色がついているのは震度だけです。

03作るときに決めた4つの線
作る前に、やらないことを決めました。ここが曖昧なままだと、後半で必ず判断がぶれます。
予測はしない
観測された結果だけを扱います。「今後こうなる」は書きません。外したときに避難の判断を殺しますし、地震の予報は資格のいる領域です。気象庁など公的機関の呼びかけは、原文のまま出典付きで載せます。
こちらから比較して語らない
「10年前より多い/少ない」とは書きません。比較機能を作る代わりに、すべての地震を同じレイアウトのページで並べることにしました。2016年のページを2026年と同じ部品で描けば、行き来するだけで比較になります。サイトは一言も解釈しません。読み比べて何を思うかは、見る人のものです。
震源ではなく、その場所から見る
マグニチュードではなく「その地点で何回、震度いくつが起きたか」を主に並べます。
黙って落とさない
重複・座標不明・形式エラーで除外した件数は、必ず画面に出します。収録範囲が地震活動の終息ではなく期間で切れている場合も、そう書きます。
実際の画面には「重複・除外 77件(速報と続報の重複)」「気象庁XMLとの突合 276件 食い違いなし」が常時出ています[2]。都合の悪い数字を隠さないことが、記録サイトの信頼のほぼ全部だと考えています。

04いま出ている数字
2026年7月31日13時07分時点の画面から書き出したものです。
| 令和8年熊本地震 | 平成28年熊本地震 | |
|---|---|---|
| 起点 | 2026年7月28日 16:27 M7.1・最大震度7 |
2016年4月14日 21:26 M6.5・最大震度7 |
| 状態 | 取り込み中・4日目 | 記録終了・確定データ |
| 記録期間 | 継続中 | 727日(2018年4月10日まで) |
| 熊本県で有感(累計) | 301回 | 4,087回 |
| 震度5弱以上 | ─ | 23回 |
同じレイアウトで並べているので、行き来するだけで比較になります[2][3]。サイトからは何も言いません。
052日で動けた理由
震度7から2日後に着手し、その日のうちに公開まで持っていきました。速さの理由は3つあります。
- 作るものが自分で分かっていた。要件を人に聞く時間がありません。自分が夜中に何を見たかったかが、そのまま仕様でした。
- 消えるものを先に止めた。データの取得元を調べたところ、使おうとしていた配信元は履歴を一定件数しか保持しておらず、本震直後の記録が数日で押し出されて消えることが分かりました。設計を止めて、まず生データを全部保存しました。本震も、その22秒後の緊急地震速報も間に合いました。作るより先に、失われるものを止める。ここを間違えたら、あとから何をやっても取り返せませんでした。
- 判断の線を先に引いた。03の4つを最初に決めていたので、迷う場面がほとんどありませんでした。
いまは自動でデータを取り込み、気象庁の情報と突き合わせ、画面が自動で更新され続けています。過去の地震も同じ部品で描いています。地震を1件定義すれば、同じレイアウトのページが1枚増える作りにしてあるので、日本のどこで大きな地震が起きても、同じ形で記録を残していけます。
06リアルタイム感を、どこまで作ってよいか
「今まさに動いている」感じは、記録サイトにとって重要です。ただしそれは、実際に起きたことに限るという線を引きました。
入れたもの
- 新着ハイライト(実際に増えた行)
- 経過時間カウンタのリセット(実際に揺れた)
- 「いま」を示す縦線(実時刻)
- 分刻みのヒストグラム(揺れのなかった分は空のまま)
入れなかったもの
- 連続波形風のアニメーション
取れないデータを演出で作ると、嘘になります。それらしく動いていれば「常時観測している」ように見えますが、見ている人は不安のなかでその画面を信じます。動かしてよいのは、実データか実時刻に対応するものだけです。
07当事者が作るということ

このサイトを作れた理由は、技術ではありません。地震にあった人が何を知りたいかが、自分のこととして分かったことです。
そして当事者だからこそ、何を出さないかを決められました。予測を出さない。比較して語らない。取れないデータを演出しない。この3つは、外から作っていたら「あったほうが親切だろう」と言って、たぶん全部入れていたと思います。
私たちGMJは、ローカルビジネスの現場に向けたシステムを作っている会社です。現場のことは現場にいる人がいちばん分かっている ── という当たり前を、今回は自分が当事者になる形で確かめました。必要だと分かっているものを、必要なときに、必要な速さで形にする。それが技術を持っていることの意味だと思っています。
地震ログは非営利で続けます。広告・課金・アフィリエイト・データの販売は行いません。運営費は個人で負担しています。誤りの指摘はサイトの問い合わせから歓迎しています。
大きな地震のあとを、静かに記録する
[1] 気象庁「平成28年(2016年)熊本地震」(2026年7月31日確認)。前震は平成28年4月14日21時26分・熊本県熊本地方・深さ11km・M6.5・最大震度7(益城町)、本震は4月16日1時25分・深さ12km・M7.3・最大震度7(益城町、西原村)。https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/2016_04_14_kumamoto/index.html
[2] 地震ログ「令和8年熊本地震」(2026年7月31日13時07分閲覧)。https://jishinlog.com/kumamoto-2026
[3] 地震ログ「平成28年熊本地震」(2026年7月31日13時07分閲覧)。https://jishinlog.com/kumamoto-2016
[4] 地図の海岸線・県境は地球地図日本(国土地理院)、活断層は防災科学技術研究所 J-SHIS。出典は地震ログの各ページに表示しています。
