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お店の新サービスの作り方 ── アイデアからではなく、お客様の困りごとから始める

「やってみたい」が1年たっても形にならない。思い切って作ったら外れた——新商品・新サービスのつまずきは、たいてい同じ場所で起きます。「良さそう」と「お金を払って選ばれる」の混同です。この記事では、アイデアではなくお客様の困りごとから始めて、1枚の企画書に落とすまでをChatGPTと進めます。

この記事で分かること

  1. 「面白そう」に騙されない、反応の3段階(興味・検討・行動)
  2. アイデアの前に「困りごと」を集めて問題カードにする手順
  3. 1つの困りごとに3つの解決案を出して、同じ条件で比べる方法
  4. 9項目の一枚企画書と、「何人で成り立つか」の簡易試算
花店の作業台で、接客メモを整理しながら新サービスを考える店主の手元
最初に集めるのはアイデアではなく、店頭で実際に聞いた困りごと

01「良さそう」と「お金を払って選ばれる」は違う

新しい案を話すと「面白そう」「ぜひやって」と好意的な反応が返ってきます。でも、その人が日時を確認し、予定を空け、料金を払って来てくれるかは別の話。アンケートで「参加したい」と答えた10人が、募集開始後に1人も予約しないこともあります。反応は3段階で区別します。

興味の反応 いいね・閲覧・「面白そう」——入口にはなるが、購入の証明ではない 検討の反応 日時・価格・持ち物・キャンセルの質問——予定に当てはめ始めた印 行動の反応 予約・申込金・購入・来店——判断で最も重く見る 見るのは「欲しいと言った人の数」ではなく「予約した人の数」
下に行くほど数は減るが、判断の重みは増す

02アイデアの前に、お客様の困りごとを集める

いきなりChatGPT(対話型のAIサービス)に「花屋の新サービスを10個出して」と頼むと、定期便・ワークショップ・サブスクといった一般的な案が並びます。間違いではありませんが、自店のお客様が今困っていることと結びついていなければ、実行する理由がありません。集めるのは、店頭で何度も聞かれる質問、購入を迷ってやめた理由、「こういうものはないですか」の声。花店の例です。

お客様の言葉 場面 今の代わりの行動 店が確認した事実
家でうまく飾れない 自宅用の花を購入 短く切って1つの花瓶へ 飾り方の質問が月に複数回
初心者向け教室はないか 店頭で相談 動画を見て試している 3人から質問があった
平日は仕事で難しい 日時を質問 休日に別の教室を探す 土日の希望が2件

声が貯まったら、ChatGPTに似た声をまとめさせ、1枚の「問題カード」に絞ります。

コピーして使えます

以下は、小さな店で受けた質問と接客メモです。
個人情報は削除してあります。

お客様の言葉を、似た困りごとごとにまとめてください。
各グループについて、次を整理してください。
1. お客様が困る場面
2. お客様が実際に言った言葉
3. 今している代わりの行動
4. 店が確認できた事実
5. まだ確認できていない仮説
6. 次にお客様へ聞く1問

ルール:
- 存在しない発言や人数を作らない
- 1件の声を全顧客の意見にしない
- 解決策を先に決めない
- 分からないことは「要確認」と書く

[接客メモを貼る]
【問題カード】(花店の例)

誰が: 花を飾りたいが、経験の少ない近隣のお客様
どんな場面で: 自宅用の花を選び、食卓へ飾るとき
何に困っている: 花の長さ、組み合わせ、花器との合わせ方が分からない
今はどうしている: 1輪だけ買う、動画を見る、店員へその都度聞く
確認できたこと: 飾り方や初心者向け教室の質問が複数あった
まだ分からないこと: 希望曜日、払える金額、教室形式が本当に良いか
件数・期間: 直近1か月の接客メモで関連する声が7件

対象を「花が好きな人」と広げないこと。困る場面まで絞ると、作るものと聞くことが具体的になります

031つの困りごとに、3つの解決案を出す

困りごとは1つでも、解決方法は1つではありません。花店は「家でうまく飾れない」に対して、案A: 少人数の季節花レッスン(4人・60分)/案B: 花材キット+飾り方カード/案C: 15分の花選び相談の3案を作りました。ChatGPTには派手な案を競わせず、同じ条件で比べさせます。

コピーして使えます

次の困りごとに対して、当店で試せる解決案を3つ出してください。

[問題カードを貼る]

[店の条件]
- 店主とスタッフ一人
- 平日15時から17時が比較的空いている
- 追加で使える予算は1万円以内
- 7日以内に反応を確認したい
- 大量の専用在庫は持たない
(…自分の店の条件に置き換える)

各案を、次の項目で比べてください。
1. 困りごとへの近さ
2. 7日以内に試せるか
3. 最初に必要な費用
4. 店主とスタッフの作業時間
5. お客様が実際に行動したか確認できる方法
6. 失敗した場合に残る在庫や負担
7. 続ける場合の広げ方

最も良い案を勝手に決めず、店主が選ぶための質問を1問ずつしてください。

花店が案Aを選んだ理由は「店主の説明力と空き時間を使え、4人分なら大きな投資が不要」だから。案BやCが悪いのではなく、案Aで需要が確認できたら後から広げられる——この順番が小さく試すということです。

041文に磨いてから、一枚企画書にする

企画を1文で説明できなければ、POPも予約ページもぼやけます。型はこれです。

[どんな人]が、[困る場面]で、[できるようになること]を、
[この店ならではの方法]で実現する[商品・サービス]。

→ 花を家に飾りたいけれど選び方が分からない初心者が、
  近所の花店で季節の花に触れながら、60分で食卓用の
  小さなアレンジを自分で作れる少人数レッスン。

「季節の花を楽しむ素敵な時間」では誰の何が変わるか分かりません。「初心者」「食卓用」「60分」「少人数」まで入ると、お客様が自分に向くか判断できます。1文ができたら、9項目の一枚企画書へ。

【新商品・新サービス 一枚企画書】(花店の初稿)

仮の名前: はじめての季節花レッスン
対象: 花を飾りたいが、選び方や長さの調整に自信がない初心者
困る場面: 自宅用の花を買っても、食卓にうまく飾れない
変化: 季節の花を選び、小さな花器へ自分で飾れるようになる
内容: 最大4人、60分、店頭で実際に作る。作品は持ち帰り
この店の理由: 普段販売している季節の生花を、店主から直接学べる
価格案: 一人3,300円。花材・消耗品を含む
必要なもの: 4人分の花材、はさみ、机、準備と片付け
確かめたいこと: 7日間で、料金を確認した上で3人以上が予約するか
花店のカウンターに置かれた手書きの一枚企画書と季節の花
長い事業計画書は要らない。お客様に見せて直すための「初稿」を1枚

05価格は「相場」だけで決めない ── 何人で成り立つかを先に知る

「似た教室が3,000円だからうちも3,000円」では、店に何が残るか分かりません。試験の前に、簡易試算をひとつ。

参加費 3,300円 −1人分の変動費 1,050円 残り 2,250円/人 共通費 1,500円 +店主の時間 5,000円 合計 6,500円 6,500 ÷ 2,250 = 約2.89人 → 予約3人が基準 「7日間で、料金を確認した上で3人以上が予約するか」——数字で決めておく ※家賃・光熱費・決済手数料等を含まない簡易計算。正式な利益計算ではなく、 「払う需要があるか」「店主の時間を含めても続けられそうか」を見るための目安
店主の時間をゼロ円にしない。それを含めて成り立つかを試験の基準にする

この「小さく試して確かめる」姿勢は、国の調査から見ても伸びしろです。2025年版小規模企業白書によると、新しい製品・サービスの開発(プロダクト・イノベーション)に「取り組んだ」小規模事業者は1割程度にとどまる一方、取り組んだ事業者の方が新規顧客数の見通しを「増加」と答えた割合が高い傾向が示されています。[1] 大量生産はできなくても、お客様の声に細かく応えて小さく試せるのは、小さな店の強みなのです。

06まとめ ── 今週の60分でやること

  • 接客メモから困りごとを集めて、問題カードを1枚作る
  • 1つの困りごとに解決案を3つ出し、同じ条件で比べる
  • 選んだ案を「誰に・何が変わり・なぜこの店か」の1文にする
  • 9項目の一枚企画書を書く(完成版ではなく初稿)
  • 変動費と共通費から「何人で成り立つか」を計算し、試験の基準にする

ChatGPTに任せないことも明確です。需要の保証、原価と価格の決定、競合情報の想像、他店の文章・画像の真似。ここまでで企画は1枚になりました。次の記事では、この企画を7日間で実際に試す方法——POPの作り方、アンケートの質問設計、予約販売・体験会などの試験形式を扱います。

[1] 中小企業庁「2025年版 小規模企業白書」第2部第1章第1節(2026年7月確認)。プロダクト・イノベーション(新しい又は改善した製品・サービスの開発)に「取り組んだ」と回答した小規模事業者は1割程度(第2-1-25図)。取り組んだ事業者は、取り組んでいない事業者より新規顧客数の見通しを「増加」と回答した割合が高い(第2-1-26図)。いずれも可能性の示唆であり、因果関係を断定するものではありません。chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/shokibo/b2_1_1.html

甲斐ショウジ

この記事を書いた人

甲斐ショウジ株式会社GMJ 代表取締役CTO兼CAIO

20年超のIT事業経験とGoogle関連事業での実績を基に、多数のAIシステムの開発を主導。AIとMEOで、小さなお店・中小企業の経営を強くする実践情報を発信しています。

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