お客様は来ている。忙しく働いている。それなのに月末にお金が残らない——この問題は、頑張りが足りないのではなく、「どの商品がもうけを生んでいるか」が見えていないだけです。
この記事で分かること
- 売上と「もうけ」(粗利)の違いを、会計用語なしで
- 主力商品5つの「簡易採算表」をChatGPTと作る手順
- 商品を「伸ばす・直す・やめる」に分ける考え方
- AIに数字を任せてよい範囲と、任せてはいけない範囲

01売上と「もうけ」は、別の数字
1,000円のランチが100食売れたら、売上は10万円。でも店に残るのは10万円ではありません。材料費を引いた残り——これが粗利(あらり)、もうけの元になる金額です。
大事なのは、粗利は商品ごとに全然違うということ。よく売れているのに粗利が薄い看板メニューと、地味だけど粗利をしっかり残す脇役。これが見えると、店の景色が変わります。
国の白書もこの点を裏付けています。2026年版白書の概要は「現状、経営リテラシーは十分ではない。経営リテラシーを有する企業は、業績や人材確保等で明確な違いを生み出す」とし、財務・会計の面では原価管理が価格転嫁率の向上や資金繰りに好影響だと整理しています。[1] 難しい会計は要りません。商品別の粗利を知る——それだけで「リテラシーがある側」に入れます。
02主力5商品の「簡易採算表」を作る
用意するのは、よく出る商品5つについての3つの数字だけです。
- 売値(お客様が払う金額)
- 材料費(1個あたり、ざっくりでよい)
- 月の販売数(レジやPOS=会計を記録するレジの仕組み、が無ければ概算で)
この表をChatGPT(対話型のAIサービス)に渡します。表といっても、普通の文章として1行ずつ打ち込めば大丈夫です。
コピーして使えます
店の主力商品の簡易採算表を作りたいです。 数字は概算です。計算の過程をすべて表示してください。 商品A:売値1,000円、材料費400円、月300食 商品B:売値1,400円、材料費450円、月120食 商品C:売値700円、材料費150円、月200食 (…自分の店の数字に置き換える) 次を計算して、表にまとめてください。 1. 商品ごとの1個あたり粗利(売値−材料費) 2. 商品ごとの月の粗利合計 3. 店全体の粗利に占める割合 そのうえで「売れている順」と「粗利を稼いでいる順」を 並べて見せてください。順位が入れ替わる商品に印を付けてください。
ポイントは「計算の過程をすべて表示」の1文。AIは計算を間違えることがあるので、過程を見えるようにして、大事な数字は電卓や表計算ソフトで検算します。答えを信じるのではなく、整理を任せるのです。
03「売れている順」と「稼いでいる順」は、たいてい違う
採算表を作ると、多くの店で同じ発見があります。いちばん売れている商品が、いちばん稼いでいるとは限らない。
行列のできるランチ店の例。1,000円の看板ランチは月300食出るけれど、材料にこだわりすぎて粗利は1食400円。一方、700円の日替わり丼は月200食で、粗利は1食550円。売上の主役はランチでも、もうけの主役は丼だった——数字にして初めて見える逆転です。

04商品を「伸ばす・直す・やめる」に分ける
見える化した商品は、3つの箱に分けます。
コピーして使えます
先ほどの簡易採算表をもとに、各商品を 「伸ばす」「直す」「やめる・任せる」の3つに分類してください。 条件: ・分類の理由を、粗利と販売数の両方から1行ずつ ・「直す」に入れた商品には、粗利を厚くする案を3つずつ (値上げ以外の案も必ず入れる) ・迷う商品は無理に分類せず「判断に必要な追加情報」を挙げる 売値や材料は店の事情があるので、最終判断は私がします。
05AIに任せてよい数字、任せてはいけない数字
数字を扱う章なので、線引きをはっきりさせておきます。
| 内容 | |
|---|---|
| 任せてよい | 粗利の計算と表の整理/「売れ筋」と「稼ぎ筋」の並べ替え/改善案の壁打ち/セット案・値付け案の比較 |
| 必ず人間・専門家 | 正確な原価の把握(実際の仕入れ値)/税金・申告に関わる判断(税理士・会計ソフト)/従業員の給与に関わる決定 |
ChatGPTは会計ソフトでも税理士でもありません。数字が間違っていれば、分析も間違う。入力する数字は自分で確かめ、税務の最終判断は専門家に。この分担を守れば、ChatGPTは「月末の不安」を「月初の作戦」に変えてくれる相棒になります。
06まとめ ── 今週の30分でやること
- よく出る商品5つの「売値・材料費・月の販売数」をメモする
- 簡易採算表のプロンプトで、粗利の順位表を作る(計算過程つき・検算する)
- 「売れている順」と「稼いでいる順」の入れ替わりを確認する
- 商品を「伸ばす・直す・やめる」に分けて、来月の力の入れ場所を決める
- 「直す」商品の値上げを考え始めたら、次回の記事へ
売上は店の外から見える数字、粗利は店の中でしか見えない数字です。外の数字を追う前に、中の数字を30分だけ見る。販促も再来店も、この土台の上でこそ効いてきます。次の記事では、いちばん気が重い打ち手——値上げをお客様へ伝える方法を扱います。
[1] 中小企業庁「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」(2026年4月・2026年7月確認)。「現状、経営リテラシーは十分ではない。経営リテラシーを有する企業は、業績や人材確保等で明確な違いを生み出す」とし、財務・会計(原価管理・資金繰り)については原価管理による価格転嫁率の向上、資金繰りへの好影響を挙げる。調査に基づく傾向であり、個別の店舗の成果を保証するものではありません。chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2026/PDF/2026gaiyou.pdf
