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客単価は、押し売りしなくても上がる ── 「一緒に選ぶ理由」の作り方と、やってはいけない見せ方

利益を増やしたい。でも、お客様に「もう一品どうですか」と勧めるのは気が引ける ── そう感じる店主は多いはずです。

その感覚は、まったく正しいと思います。押し売りは、店の信用を減らします。ただ、客単価を上げるのに押し売りは必要ありません。やることは、相性のよい組み合わせを、必要な人が選びやすくすること。この記事では、その作り方と、やってはいけない見せ方(法律の線引き)を説明します。

この記事で分かること

  1. 客単価の出し方(割り算ひとつ)
  2. 押し売りにならない「一緒に選ぶ理由」の作り方
  3. やってはいけない見せ方 ── 景品表示法の線引き
  4. 効いたかどうかを、3つの数字で確かめる方法
食後のカフェのテーブル。脇に寄せた皿と、後から選ばれたコーヒー、無地の小さなカードが立っている
勧められたからではなく、そうしたかったから。その形を作ります

01「もっと買ってください」と言いたくない

客単価を上げる、と聞くと「高いものを勧める」「もう一品つける」を想像します。だから気が進まない。実際、必要のないものを勧められたお客様は、次から来なくなります。

でも、客単価が上がる場面には、まったく別の形があります。お客様が「あってよかった」と思って、自分で選んだ場合です。この記事で目指すのは、そちらだけです。

02客単価は、割り算ひとつで出る

まず数字を出します。難しい計算は要りません。

客単価 = 売上 ÷ お客様の数

たとえば、あるランチ店の1日。主食メニューが95食、ドリンクが8杯売れ、売上は102,000円でした。

102,000円 ÷ 95人 = 約1,074円

ここで注目してほしいのは、95食に対してドリンクが8杯という点です。食後に少し休みたかった人は、もっといたかもしれません。全員に高い商品を勧める必要はなく、必要だった人が選びやすくなるだけで数字は動きます。

03上げるのは「単価」ではなく「一緒に選ぶ理由」

やることは、相性のよい組み合わせを見つけて、必要な人が気づける形に置くこと。業種ごとに、こんな形があります。

場面 一緒に選ぶ理由
飲食店 食後に少し休みたい人へ、ドリンクを見つけやすくする
小売店 少量ずつ試したい人へ、小さな追加商品を用意する
菓子店 贈り物を探す人へ、予算別の組み合わせを示す
美容室 自宅ケアが必要な人へ、使い方と一緒に商品を案内する
修理店 同時に行うと再訪の手間が減る点検を案内する
店のカウンターに、大きさの違う3つのギフト箱が等間隔に並び、それぞれの前に無地のカードが置かれている
予算別に並べて、選べるようにする。いちばん大きい箱を勧めるわけではありません

共通しているのは、店の売上だけでなく、お客様の側にも選ぶ理由があることです。ここが押し売りとの分かれ目になります。

04やってはいけない見せ方 ── 法律の線引き

組み合わせを作るときに、必ず知っておきたい線引きがあります。景品表示法の「有利誤認表示」です。

消費者庁の説明によると、景品表示法第5条第2号は、価格その他の取引条件について「実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される」表示で、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあるものを禁止しています。[1]

店の言葉に直すと、こうなります。

  • セットの方が高いのに、「単品より得」と見せる ── 合計金額を必ず確かめる
  • あいまいな「元の値段」と比べる ── 実際に売っていない価格を比較に使わない
  • 断りにくい場面を作る ── 会計後に追加を持ち出す、断る言葉を用意しないなど
  • 必要のない人にも一律で勧める ── 「必要な人が選べる」形から外れる

比べる価格の扱いにも決まりがあります。消費者庁は、同一ではない商品の価格を比較に使う場合や、比較に使う価格が実際と異なる・あいまいな場合は不当表示に該当するおそれがあるとしています。過去の価格を使うなら「最近相当期間にわたって販売されていた価格」であることが必要です。[2]

とくに大事な点があります。消費者庁は「故意に偽って表示する場合だけでなく、誤って表示してしまった場合であっても」有利誤認表示に該当すれば規制されると明記しています。[1] つまりChatGPTが書いた文章でも、出したのは店です。生成された販促文をそのまま貼らず、金額と条件を必ず自分で確かめてください。なお、個別の表示が違反にあたるかどうかの判断は、消費者庁や専門家にご確認ください。

誤解しないでほしいのは、セット販売そのものは何の問題もないということです。問題になるのは見せ方だけです。

05ChatGPTに作らせるときの条件

組み合わせの案と、その案内文を作ってもらいます。条件を先に決めておくのがコツです。

コピーして使えます

小さな店の「組み合わせ提案」を考えてください。
押し売りにならない案だけを出してください。

【店の情報】
・業種: [ ]
・主力商品と価格: [ ]
・よくあるお客様の場面: [例: 食後に少し休みたい/贈り物を探している]

【必ず守ること】
・お客様の側に「一緒に選ぶ理由」がある案だけにしてください
・割引や「お得」に見せる表現は使わないでください
・合計金額が単品より高くなる場合、安く見える書き方をしないでください
・断りやすい言い方にしてください(「ご不要な場合はそのままお申しつけください」など)
・価格・内容・在庫は私が確定します。あなたは決めないでください
・「絶対」「必ず」「一番」などの言い切りを使わないでください

【出してほしいもの】
1. 組み合わせの案を3つ(誰の、どんな場面向けか付きで)
2. それぞれの短い案内文(30字程度)
3. 案内を置く場所の候補(卓上・レジ横・会計時の一言など)

出てきた案内文は、そのまま使わず金額を電卓で確かめてから店に出します。

06効いたかどうかは、客単価だけで判断しない

ここも大事です。客単価が上がっても、お客様の数が減っていたら意味がありません。押し売りだと感じさせた結果かもしれないからです。

だから、次の3つをセットで見ます。

  • 売上 ── 全体の合計
  • お客様の数 ── 減っていないか
  • 客単価 ── 売上 ÷ お客様の数

客単価だけが上がって客数が減っているなら、やり方を戻します。3つとも維持または増加なら、続けます。ひとつの数字だけで成否を決めない考え方は、業務改善の記事でも同じです。

07まとめ ── 押し売りではなく、選びやすさを増やす

  • 客単価は割り算ひとつ ── 売上 ÷ お客様の数
  • 全員に勧めない ── 必要だった人が選びやすくなるだけで数字は動く
  • お客様側の理由がある組み合わせだけ ── ここが押し売りとの分かれ目
  • 「得に見せる」はやらない ── 誤って表示した場合も規制の対象になる
  • 3つの数字で確かめる ── 売上・客数・客単価をセットで

商品ごとの利益を先に見たい場合は簡易採算表の記事を、値上げも含めた選択肢の比べ方は利益を増やす5方向の記事を見てください。また、品質や人気の見せ方(「No.1」表示など)の注意点は集客でやらないことの記事にまとめています。

今週やることは1つです。売上をお客様の数で割って、今の客単価を出してみてください。そのうえで「これがあると助かる人がいるのに、気づかれていないもの」を1つ探します。そこが出発点です。

[1] 消費者庁「有利誤認とは」(2026年7月24日確認)。景品表示法第5条第2号は、事業者が自己の供給する商品・サービスの取引において、価格その他の取引条件について、一般消費者に対し、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると誤認されるもの、または競争事業者に係るものよりも著しく有利であると誤認されるものであって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を禁止している。具体的には、取引条件について実際よりも有利であると偽って宣伝する行為などが該当する。故意に偽って表示する場合だけでなく、誤って表示してしまった場合であっても、有利誤認表示に該当する場合は規制の対象となる。個別の表示についての判断は消費者庁または専門家に確認すること。https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/advantageous_misidentification

[2] 消費者庁「二重価格表示」(2026年7月24日確認)。「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(価格表示ガイドライン)のポイントとして、同一ではない商品の価格を比較対照価格に用いる場合、比較対照価格に用いる価格について実際と異なる表示やあいまいな表示を行う場合は、不当表示に該当するおそれがあるとされている。過去の販売価格を比較対照価格とする場合、同一の商品について「最近相当期間にわたって販売されていた価格」であれば該当のおそれはないが、そうといえない価格を用いる場合は、その価格がいつの時点でどの程度の期間販売されていたかなどを正確に表示しない限り不当表示に該当するおそれがある。https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/double_price

甲斐ショウジ

この記事を書いた人

甲斐ショウジ株式会社GMJ 代表取締役CTO兼CAIO

20年超のIT事業経験とGoogle関連事業での実績を基に、多数のAIシステムの開発を主導。AIとMEOで、小さなお店・中小企業の経営を強くする実践情報を発信しています。

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