求人を出したら、応募が10件来た。数字だけ見れば成功に見えます。ところが、条件を読んでいない人ばかりで、面接の連絡だけで何時間も溶けた ── そんな経験はないでしょうか。
反対に、応募が2件でも、仕事の中身をきちんと分かった人と話せて、その一人が半年後も元気に働いている。どちらが成功かは明らかです。この記事は、求人の良し悪しを「応募数」ではなく「続いた人」で見るための、数え方の話です。
この記事で分かること
- 小さな店ほど「採れても続かない」が起きやすい理由(公的統計)
- 求人で見るべき、9つの段階
- 「どこで止まったか」で原因を絞る方法
- 人数が少ない店で、割合をうのみにしない考え方

01応募10件より、話が通じる2件
応募数は、求人の入口の数字にすぎません。応募が多いこと自体は悪くありませんが、条件が合わない応募が増えると、店主の対応時間だけが増えます。
連絡し、日程を調整し、来なかった人にまた連絡する。その時間は、本来なら店に使えた時間です。だから、応募数を成果にすると判断を誤ります。
02小さな店ほど、「採れても続かない」が起きやすい
これは気のせいではありません。厚生労働省が毎年公表している離職状況の統計で、事業所の規模別に、就職して3年以内に辞めた人の割合を見ると、次のようになっています。[1]
| 事業所の規模 | 高校卒 | 大学卒 |
|---|---|---|
| 5人未満 | 63.2% | 57.5% |
| 5〜29人 | 54.6% | 52.0% |
| 30〜99人 | 45.2% | 41.9% |
| 100〜499人 | 36.7% | 33.9% |
| 1,000人以上 | 26.3% | 27.0% |
規模が小さいほど、離職率が高くなります。5人未満(高校卒63.2%)は、1,000人以上(26.3%)の約2.4倍です。
業種別に見ても、上位は小さなお店の多い分野です。[1]
| 業種(3年以内離職率の上位) | 高校卒 | 大学卒 |
|---|---|---|
| 宿泊業、飲食サービス業 | 64.7% | 55.4% |
| 生活関連サービス業、娯楽業 | 61.5% | 54.7% |
| 医療、福祉 | 49.2% | 40.8% |
| 小売業 | 48.3% | 40.4% |
この統計は新規学卒者(新卒)を対象に、雇用保険の記録から集計したものです。パートやアルバイト、中途採用も含めた全体の数字ではありません。また「小さい店が悪い」という話でもありません。人数が少ないほど、一人の相性や受け入れ体制の影響が大きく出る、という構造の話として読んでください。
言いたいことは1つです。小さな店では、採用は「入った日」ではなく「続いたかどうか」で決まります。だから、見る数字も最後まで伸ばす必要があります。
03求人で見るのは、9つの段階
応募数ひとつではなく、募集から定着までを段階に分けて数えます。
| 段階 | 数えるもの |
|---|---|
| ① 見られた | 求人の閲覧数(媒体に表示があれば) |
| ② 応募が来た | 応募の件数 |
| ③ 条件が合った | 勤務日・時間などの条件が合う応募の数 |
| ④ 面接へ進んだ | 面接の約束をした人数 |
| ⑤ 面接に来た | 実際に来店した人数 |
| ⑥ 採用を伝えた | こちらから採用を伝えた人数 |
| ⑦ 受けてくれた | 採用を承諾した人数 |
| ⑧ 入社した | 実際に働き始めた人数 |
| ⑨ 3か月後も働いている | いちばん大事な数字 |
紙に手書きで構いません。段階ごとに正の字で数えるだけです。

04大事なのは「どこで止まったか」
段階に分ける理由は、止まった場所によって打つ手が変わるからです。
| 止まった場所 | 考えられること | 次の一手 |
|---|---|---|
| ①→② 応募が来ない | そもそも見られていない/条件が伝わっていない | 掲載先・時間帯・仕事内容の書き方を見直す |
| ②→③ 条件が合わない | 勤務日や時間の書き方があいまい | 必須条件を求人の冒頭に短く明記する |
| ④→⑤ 面接に来ない | 連絡が遅い/場所や持ち物が不安 | 返信を早く、場所と所要時間を先に伝える |
| ⑥→⑦ 断られる | 条件・雰囲気が想像と違った | 面接で仕事の実際を具体的に見せる |
| ⑧→⑨ すぐ辞める | 受け入れの準備が足りない | 初日と30日の受け入れを整える(育成の記事へ) |
「応募が来ない」と「すぐ辞める」では、直す場所がまったく違います。段階を分けずに求人だけ書き直しても、⑧→⑨で止まっているなら効きません。
05人数が少ない店では、割合をうのみにしない
ここは注意が必要です。応募が3件の店で1件が面接に来なければ、それだけで「面接来訪率67%」になります。一人の増減で割合が大きく動くので、パーセントだけを見て一喜一憂しても意味がありません。
そこで、数字と一緒に言葉を残します。
- 応募者から聞かれたこと ── 「土曜は必ず出勤ですか」「子どもの行事で休めますか」など
- 断られたときの理由 ── 聞ける範囲で構いません
- 辞めた人が最後に言ったこと ── 責めずに、事実として書き留める
この言葉が、次の求人文で直す場所を教えてくれます。数字は「どこで止まったか」、言葉は「なぜ止まったか」を教えてくれる、と考えてください。
06ChatGPTに、通り道の記録を整理させる
3か月ぶんの記録がたまったら、整理してもらいます。数字を作らせず、整理だけさせるのがコツです。
コピーして使えます
小さな店の求人の記録を貼ります。 どこで人が減っているかを整理してください。 あなたが数字を作らないでください。 【今回の記録】 ・求人の閲覧数: [ ] ・応募: [ ]件 ・条件が合った: [ ]件 ・面接の約束: [ ]人 ・面接に来た: [ ]人 ・採用を伝えた: [ ]人 ・受けてくれた: [ ]人 ・入社した: [ ]人 ・3か月後も働いている: [ ]人 【応募者から聞かれたこと】 [メモをそのまま貼る] 【出してほしい整理】 1. いちばん人数が減っている段階はどこか 2. その段階で考えられる原因(断定せず、可能性として) 3. 次の募集までに直せること(3つまで) 4. この記録だけでは判断できないこと 【守ってほしいこと】 ・母数が少ないので、割合だけで断定しないでください ・応募者個人の性格や事情を推測しないでください ・私が書いていない事実を補わないでください
個人が特定できる情報(氏名・連絡先・応募書類そのもの)は貼らないでください。数と、聞かれたことの要点だけで十分です。
07まとめ ── 求人の成功は「続いた人」で決まる
- 応募数は入口の数字 ── 条件の合わない応募が増えると時間だけ減る
- 小さな店ほど続かない傾向がある ── 5人未満63.2%と、規模が小さいほど離職率が高い
- 9つの段階で数える ── 最後は「3か月後も働いている人数」
- どこで止まったかで手を変える ── 応募ゼロと早期離職では直す場所が違う
- 割合より、聞かれた言葉 ── 人数が少ない店は数字が跳ねる
求人文そのものの作り方は小さな店の求人の記事に、入社後の受け入れは30日の育成の記事にまとめています。また、ひとつの数字だけで成否を決めないという考え方は、業務改善でも同じです(6つの数字で確かめる記事)。
今回やることは1つです。次の募集から、紙を1枚用意して段階ごとに数えてください。3か月後、その紙が次の求人文を教えてくれます。
[1] 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(令和7年10月24日公表/2026年7月24日確認)。事業所規模別の就職後3年以内離職率は、5人未満が高校卒63.2%・大学卒57.5%、5〜29人が54.6%・52.0%、30〜99人が45.2%・41.9%、100〜499人が36.7%・33.9%、500〜999人が29.9%・31.5%、1,000人以上が26.3%・27.0%。産業別では宿泊業,飲食サービス業64.7%・55.4%、生活関連サービス業,娯楽業61.5%・54.7%、教育・学習支援業53.6%・44.2%、医療,福祉49.2%・40.8%、小売業48.3%・40.4%。全体では高校卒37.9%、大学卒33.8%。本統計は新規学卒者を対象に、事業所からハローワークへ提出された雇用保険の記録等をもとに算出したものであり、パート・アルバイトや中途採用を含む全体の離職率ではない。https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00010.html
