お客様へ送る連絡文を、ChatGPTに書いてもらいたい。そう思ったとき、手元にあるのは予約表や顧客名簿です。これをそのまま貼れば早い——そこで手が止まった人に向けた記事です。
結論から書きます。名簿は貼りません。代わりに、空欄だけが並んだ「型」をChatGPTに作らせ、中身は店が手で埋めます。この記事は、その作り方だけを扱います。
この記事で分かること
- 文章を「型」と「中身」に分けるという考え方
- 毎回確認するより、入れない設計にしたほうが現実的な理由
- 空欄だけの型を作らせるプロンプト(そのまま使えます)
- できた型を、店の資料として使い続ける方法

01「入れない」と決めた後で、手が止まる
ChatGPTに入れてよい情報の線引きについては、別の記事で青・黄・赤の3色に分けて説明しました。顧客名簿・予約表・問診票は赤。そのまま入れない、というのがそこでの結論です。
ただ、線引きを決めただけでは仕事は終わりません。お客様への連絡文は、今日も書かなければならないからです。ここで「入れないと書いてもらえないのでは」と思い、結局貼ってしまう。それが一番多い失敗です。
入れなくても書いてもらえます。頼み方を変えるだけです。
02文章を「型」と「中身」に分ける
お客様へ送る文面を、2つに分けて考えます。
| 分けたもの | 中身の例 | 誰が用意するか |
|---|---|---|
| 型(かた) 文章の形・順番・言い回し |
あいさつ/お礼/確認事項の並べ方/締めの1文/どこに何を書くかの空欄 | ChatGPTに作らせる |
| 中身 個人にひもづく事実 |
お客様の名前・日付・利用内容・連絡先・担当者が確認した内容 | 店が手で埋める |
大事なのはここです。型のほうには、個人情報がひとつも含まれていません。だから安心して渡せます。そしてAIが本当に得意なのは、実はこの型のほう——言い回しを整え、順番を決め、抜けを防ぐ部分です。
中身のほうは、そもそもAIに考えさせてはいけない部分でもあります。誰が何をしたかは、店が知っている事実だからです。
03確認し続けるより、入れない設計にする
個人情報保護委員会は、生成AIサービスの利用について注意喚起を出しています。事業者向けの注意点として書かれているのは、たとえば次のような内容です。[1]
- 個人情報を含む入力をする場合、あらかじめ決めた利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認すること
- 本人の同意なく個人データを含む入力を行い、それが回答を出す以外の目的で扱われる場合は、法違反となる可能性がある。そのため、その事業者がその個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認すること
あわせて配布されている資料では、もう少し踏み込んだ整理がされています。入力した情報が学習データとして使われることが予定されている場合、それは個人データを第三者へ提供したことになるため、原則としてあらかじめ本人の同意が必要になる(個人情報保護法第27条・第28条)、というものです。[1]
誤解のないように書いておきます。「ChatGPTを使うと違法」という話ではありません。学習に使われる設定かどうかと、入れるものが個人データかどうかで変わります。個別の判断は、専門家や所管の窓口に相談してください。
ここで小さな店にとって現実的かどうかを考えます。規約も設定も、サービス側の更新で変わります。連絡文を書くたびに規約を読み直し、設定を確かめる——それを一人で回し続けられるでしょうか。多くの店では続きません。
だから順番を変えます。毎回確認して安全を保つのではなく、そもそも確認が要らない形にしておく。個人情報を入れなければ、この論点は最初から発生しません。
不安を感じているのは店主だけではありません。総務省の調査では、AIを使うときのリスクとして「入力した情報が第三者に漏れる可能性」を感じる人が64.0%にのぼります。[2] これは調査の10項目のうち2番目に高い数字です。お客様の側も、同じ不安を持っていると考えておいたほうがよいということです。
04空欄だけの型を、AIに作らせる
実際の頼み方です。角かっこの空欄を残させるところがポイントになります。
コピーして使えます
お客様へ送る連絡文の「型」を作ってください。 実際のお客様の情報は一切書かないでください。 【用途】 [ここに用途を書く。例: 来店後の連絡/予約内容の確認/問い合わせへの返信] 【必ず守ること】 ・お客様の名前、日付、内容などは[ ]の空欄にしてください ・空欄には「何を書く欄か」だけを示してください ・私が渡していない事実を、推測で書き足さないでください ・店が決めていない料金、時期、必要性をあなたが決めないでください ・健康や体調に関する新しい助言を作らないでください ・不安をあおる言い方をしないでください ・値引きで来店を迫る書き方をしないでください ・連絡が不要というご希望を尊重する1文を入れてください 【この店の決まりごと】 [店が承認している案内文があれば貼る] [予約のルール] [問い合わせ先の案内ルール] 型が完成したら、そのまま印刷して使える形で出力してください。
最後の1文を入れておくと、説明が長々と付いてこず、そのまま使える形で返ってきます。
05出てくる型の実物と、埋め方
返ってくるのは、たとえばこういうものです。空欄しかない、という点を確かめてください。
できあがる型の例
【お客様のお名前】[店が記入] 【ご来店日】[店が記入] 【ご利用いただいた内容】[店が記入] 【当日ご案内した内容】[担当者が記入] 【次回の目安】[担当者が判断して記入。空欄のままでも可] 【ご予約】[店の正式な予約先] 【お問い合わせ】[店の正式な連絡先] ※ご連絡が不要な場合は、お手数ですがお知らせください。
あとは、この型を印刷するか画面に開いて、空欄を店が手で埋めます。ここまで来れば、ChatGPTの画面にお客様の情報が入ることは一度もありません。
同じやり方は、いろいろな場面で使えます。
- 来店後の連絡
- 予約内容の確認
- 問い合わせへの返信
- 見積の下書き
- お断りやお詫びの連絡(内容の判断は必ず人がしてください)
なお、お客様の反応を月末に振り返るときも同じ考え方です。名前ではなく件数で見る方法はこちらの記事にまとめています。
06型を、店の正式資料にする

いい型ができたら、その場限りにしないでください。店の正式な資料として保存します。印刷してファイルに入れてもいいし、共有フォルダに置いてもかまいません。
- 保存する ── 次回からは作り直さず、この型を使う
- 更新する ── 価格・メニュー・予約ルールが変わったら、型も直す
- 共有する ── スタッフが増えても、同じ型を使えば言い方がそろう
- 名簿の代わりにしない ── ChatGPTのメモリーにお客様の情報を覚えさせない
最後の1点だけ補足します。ChatGPTには会話の内容を覚えておくメモリーという機能がありますが、これを顧客名簿や施術記録の置き場所にしてはいけません。覚えさせてよいのは業種や客層のような、変わりにくく個人にひもづかない前提だけです。詳しくはメモリーの記事にまとめています。
07まとめ ── 形は共有し、中身は店に置く
- 文章を型と中身に分ける ── 型はAIに、中身は店が手で
- 型には個人情報が無い ── だから安心して渡せる
- 毎回確認するより、入れない設計に ── 規約も設定も変わる。確認が要らない形にしておく
- 空欄を残させる頼み方をする ── [ ]に「何を書く欄か」だけを書かせる
- できた型は店の資料にする ── 保存して、変更があったら更新する
入れてよい情報の線引きそのものはChatGPTに入れてはいけない情報の記事を、実際に送る文面に何を書くか(お礼・安心・次の一歩)は再来店の仕組みの記事を見てください。本記事はその2つをつなぐ、「入れずに、どう作るか」の部分です。
今週やることは1つだけです。よく送る連絡文をひとつ選んで、型を作らせてみてください。一度作れば、来週からは空欄を埋めるだけになります。
[1] 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日/2026年7月24日確認)。個人情報取扱事業者が生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、特定された利用目的の達成に必要な範囲内であることを十分に確認すること。あらかじめ本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを入力し、当該個人データが応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合は個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性があるため、当該サービス提供事業者が当該個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認すること。あわせて公表されているリーフレットでは、入力する情報が学習データとして利用されることが予定されている場合、個人データを第三者に提供する場合には原則としてあらかじめ本人の同意が必要である旨(個人情報保護法第27条・第28条)が示されている。個別事案の法的判断は専門家・所管窓口へ。https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/
[2] 総務省「令和7年版 情報通信白書」図表I-1-2-11「AI利用リスクに関する考え方」(2026年7月24日確認)。公式配布データ(f00040)で実測。「AI利用の際に入力した情報が第三者に漏れる可能性があること」について「非常にリスクだと感じる」28.8%、「どちらかと言えばリスクだと感じる」35.2%、合計64.0%(n=1,030)。同図の10項目中2番目に高い(最も高いのは「悪意のあるものによってAIを犯罪等に利用される可能性」64.5%)。個人を対象とした調査であり、店舗経営者に限った統計ではない。https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd112210.html
